02.入学 ページ2
.
全身が映る、大きな鏡の目の前に仁王立ちする。
『髪の毛良し!』
くるりと回って
『制服良し!!』
ニカッと笑う
『笑顔良し!!』
かばんを背負って
『さあ行くぞ!!』
今日から私は、高校生になる。
◇ ◇ ◇
『…え?誰ですかあなた』
「…うちの野球部の監督の…」
『はい』
「佐藤と申します」
『誰?!!!』
職員室の前で絶句する。
入学式を終えて、はやる気持ちを抑えながら職員室に走って入部届けを持ってきた。
おかしいな、名前は印象的だったから覚えてるはずなんだけどーーーーー
『あの、さとう先生でしたっけ』
「そうですが」
『まさか車を3つ並べてさとうと読ませるとかないですよね?』
「ないです」
やっぱりそうだ。
ていうか顔違うし
年齢も見たところ違うし
『人違いでした。失礼しましたー』
ガラリと職員室の引き戸を閉める。
『…おっかしいなあ』
脳裏に映るのは、2人の親子の姿だった。
誰もいない川辺
ツンツンした真っ黒な黒髪、笑い方の印象的な、親ばかのーーーー
『…行ってみるか』
久しぶりに、あっちの方。
ブツブツ言いながら、職員室をあとにした。
背の高い男の子の視線に、気づかないまま。
460人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時