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芸能界で美形と呼ばれる人達に見慣れている自分から見ても星見Aは綺麗だった。
それだけでも凄いのに、彼女はお金や技術まで持っているのか。じゃあ逆に何を持っていないんだろう。と、ゆうたは心の中で呟いた。
「……“父”って言ってたね」
「うん……あれ、ゆうたくん、もしかして機嫌悪い?」
心配気にこちらを見てくる自分と同じ顔に、ゆうたは少しドキリとしながら慌てて首を振る。
「まさか!……ただ、思っちゃっただけ。星見さんって言ったっけ?あの子、空腹で死にそうになったこととかあるのかなって」
「ゆうたくん……」
嗚呼、本当は今こんなことを言うべきじゃない。ひなたにこんな顔をさせるべきじゃない。
それぐらいわかっているのに、突然現れた“人の理想”を形にしたみたいな女の子を前に、そう考えずにはいられなかった。
*
「……日和くん、私に嘘ついた?」
一方で凪砂と日和。
一緒に廊下を歩いていた凪砂は突然そう切り出した。
「なんで?突然酷いことを言うね、凪砂くんは!」
「だってあの子、はじめましてって言った」
「……」
ぴしりと固まった日和の表情に気づいているのかいないのか、凪砂は続ける。
「日和くん、言ったよね。小さい頃社交界であの子に会ったって。違ったの?」
今日彼女を待っているとき、日和は確かにそう言った。そのはずなのに。
「……凪砂くん。凪砂くんは忘れたいこととか、ある?」
「突然だね。その質問の答えだけど……わからない、かな。今は忘れたくてももっと時間が経てば忘れたくなくなるかもしれないから」
「うんうん、凪砂くんらしい答えだね!いい日和!……けど、多分その歳でそうはっきり言えるのは凪砂くんぐらい」
大きくため息をつきながら日和は廊下の窓にもたれかかる。
「あの子は、無理だったね。その解を得る前に全部がおかしくなって、全部忘れることで何とか自分を守った」
「……?子どもは自分の心を守るために嫌な記憶を消してしまうことがあるらしいけど、その話をしている?」
「まぁそんなところだね」
少し悲しげに笑って再び歩き出す日和を凪砂も追いかける。
「茨がまたあの子を使って何か企んでるみたいだけど」
「あはは、じゃあ僕はあの子を守ってあげなきゃね!……昔、僕達はあの子を守れなかったから」
それは遠い、遠い記憶。
彼女がどれだけそれを不要なものとして切り捨てようと、自分は死んでもそれを忘れないと決めていた。
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紅鮭@くじら(プロフ) - 甘風さん» 星見のキャラを気に入っていただけてすっごく嬉しいです〜!ありがとうございます(..›ᴗ‹..) 更新がんばります!! (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - みるタピさん» コメントありがとうございます!そろそろ更新速度戻す予定なのでこれからもよろしくお願いします!(⑉• •⑉) (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
甘風 - とっても面白くて好きです!更新頑張ってください!星見ちゃんのキャラが良い...! (2022年12月5日 23時) (レス) @page33 id: e3065dc72d (このIDを非表示/違反報告)
みるタピ(プロフ) - とても楽しんで読ませていただいています!テスト大変だと思いますが頑張ってください! (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: c5e7b71543 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 立花さん» 立花さん、コメントありがとうございます!!正直ギャグには全然自信がないのでそう言っていただけて嬉しいです!笑 更新がんばりますね〜!! (2022年9月30日 21時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
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