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●絶対排他的ラブコメ領域__3 ページ7

ボクと彼女の出会いは、夢ノ咲に入学するよりも前。

いや、正確にはちょっとした違いだ。入学の2、3日前に彼女のことを知った。なんでも、ボクらと同時にアイドル科に入ってくる女子生徒がいる、と。

Aは今となっては新設されたプロデュース科に在籍しているけど、元々はボクと同じアイドル科だった。しかし誰とユニットを組むでもなく、授業だけ受けておいてレッスンすらしない。

彼女は革命が起こってもなお放浪してアイドルらしい素振りなど見せなかった。留年寸前になってからようやくドリフェスに参加し始め、ギリギリ単位をとったところでアイドルとしての活動はぱったりと止めてしまった。

ボクは彼女のライブを見たことがない。聞いた話だけど、昨年のドリフェスではどこかのソロユニットの先輩よろしく一人で参加していたらしい。

ドリフェスの舞台は、忌まわしい生徒会によるただの一方的な処刑場だ。ボクは留年を免れようとライブに参加する彼女を、止めてやれなかった。

彼女のパフォーマンスは、とても綺麗だったという。S2では生徒会に何度も負かされたものの、S1では僅差だったとか。もっとも、彼女のパフォーマンスを目にした者はこの学院でもたったの十数人だそうだ。


「私さ、最初からアイドルになる気なかったんだよね」


去年の冬、彼女は唐突にもそう切り出した。あまりに突然だったからろくに言葉を発せず、ただ曖昧に頷いて続きを促した。


「いやほんとさ、私プロデューサーなりたかったんだよ!?アイドル科っつーからプロデュースもできんのかと思ったのにさあ!?イケメン選手たちの中紅一点の女マネに憧れてサッカー部入ったらこのザマだよ!!」

「本当君って例え独特だネ」

「だってこの方が伝わりやすくない?……とにかく、このままサボっててもなんとか将来プロデューサーくらいにはなれそうだったのに、なんかどんどん制度が変わってっちゃうしさ?びっくりしたよ、何から何まで新しくなって、次から次へと人が死ぬ。革命時のフランスにタイムスリップでもしたのかと思った」


そんな言葉を並べておきながら、彼女の声は震えていた。

Aはボクと同じくらい革命に近しく、遠かった。だからこそ歴史の教科書で読んだみたいに革命を頭で理解し、そして当時の平民たちのように革命を肌に刻み込まれてもいた。


「ほんと私って、なんにもできなくて嫌になる」


ボクらの街に雪が降った。

恋心の蕾は、まだ花開かないままで。

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月華 - 好きです。失礼しました (2020年9月19日 17時) (レス) id: 561e3188bf (このIDを非表示/違反報告)
浅ヶ巳 - 瀬名さん» ありがとうございます!!!!!これからも精進していきますね!!!!! (2020年9月10日 20時) (レス) id: 86116bbd22 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名 - 好きです! (2020年9月7日 23時) (レス) id: 86245055db (このIDを非表示/違反報告)
浅ヶ巳 - sakuyah1226さん» わーー!!!!ありがとうございます!!!自己管理も更新もがんばります!!!!! (2020年9月7日 19時) (レス) id: 86116bbd22 (このIDを非表示/違反報告)
浅ヶ巳 - るるさん» ありがとうございます!!、!これからも更新頑張ります!!!!! (2020年9月7日 19時) (レス) id: 86116bbd22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:浅ヶ巳 | 作成日時:2020年8月28日 21時

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