″元″冷酷のマネージャー【御幸一也】

第百四十九話 ページ15

全員がお風呂に入り終えたであろう時間。

今日の試合をまとめていると、ドアがノックされた。



貴『...御幸？』



出ると、少し表現の暗い御幸が立っていた。

髪からはポタポタと水滴が垂れ、首にはタオルがかかっている。

お風呂から上がってすぐに来たのだろう。


風邪を引いてはいけないので、取り合えず部屋に上がってもらった。

ベッドに座らせ、後ろに回って首にかかっているタオルで髪を拭いた。



御「って、何だよ急に...！」


貴『いいから、大人しくしてて』



急に髪を拭かれて驚いた御幸がこっちを振り返ったが、

私がそう言うと、素直に前に向き直った。


少しして髪が乾き、タオルを首にかけ直してから、私は隣に座った。



御「...俺、やっぱり主将向いてねぇよな」



暫しの沈黙の後、御幸が口を開いた。



御「今日だって、本当は降谷に声かけたりしたほうがよかったんだろうけど、

　 ここまで悪いと言いたいこと多過ぎて、逆に何言えばいいか分からなくなるし』


貴『......』



御幸が弱音を吐くのは、かなり珍しいことだった。

その弱音を、私は黙って聞く。



御「どうしたらいいんだろうな、俺...」


貴『...私も、御幸は主将に向いてないと思う。

　 腹黒いし、人の気持ち考えないし、そもそもチームを率いるような性格じゃないし』


御「お前も相当だぞ...」



『でも』と私は付け加え、御幸をギュッと抱きしめた。



貴『みんなから強い信頼を寄せられてるのは確かだし、

　 みんなが知らないところで、人の倍努力してるのも知ってる。

　 向いてなくても、チームを任せられるのは御幸しかいないのよ』


御「俺じゃなくたって、倉持やゾノだっているだろ」


貴『そんな二人にあなたは任せられたんだから、それに答えるのが義務じゃないの？

　 何でも一人で抱え込まないで。今みたいにいつでも相談に乗るし、

　 吐き出したいときは、全部言って。一緒に背負ってあげるから』



そう言えば、御幸は何か吹っ切れたように、「ありがとな」と背中に腕を回した。

私は思わず御幸の首筋に顔を埋める。



御「ん？どうした？」


貴『...私今、凄い恥ずかしいこと言った』



顔を埋めたまま言うと、「可愛い」と御幸は私の頭を撫でた。



貴『絶対相談しなさいよ...か...一也』



仕返しに名前を呼べば、御幸は耳まで赤くした。

この何気ないことでも幸せに感じるのだから、

私は知らぬ間に、相当御幸に依存していたようだ。

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