パン屋の黄金タルト ページ20
･
【ここに座ってちょうだい、お嬢ちゃん】
コレットさんに促され、私は夫婦のパン屋に来ていた。
…
……
………
…………
……………
………………
…………………
【それはサザンカかな】
私のスケッチブックを指してジルさんは言った。
｢【はい、そうです！】｣
そう答えると、彼は少し考える素振りをした。
【このあと時間あるかい?
新作のパンがそろそろ出来上がるから
食べて見てほしいんだ】
優しい目をしているジルさんの横には
期待の眼差しでこちらを見てくるコレットさんが居た。
｢【時間はありますけど…………】｣
まだ未完成の絵を放っては置けないが、
優しそうなパン屋の夫婦にも応えたい。
｢【新作のパン食べたいです】｣
丁度、お昼時だったから
そんな言い訳を頭に浮かべ、
画材たちを両手にパン屋へと向かったのだった。
………………
……………
…………
………
……
…
【はい、お待ちどおさま 新作のミラベルのタルトだよ】
タルト? パンって言ってなかったっけ?
そう疑問に思いながらも、黄金色のタルトを口に運んだ。
｢【美味しい……!!!】｣
ミラベル……思い出した。
祖国では西洋スモモといわれる、上品な甘さの果物だ。
祖国のスモモよりも桃に似ている。
すっきりとした甘みが舌の上にひろがった。
【良かったわ〜
夫のジルは何でも美味しいって言うから
信用できなくって……】
頬に手をあて、コレットさんは言った。
ジルさんはというと描き途中のサザンカの絵を見ている。
｢【本当に美味しいですよ！持って帰りたいくらい！】｣
この美味しいタルトを
宗にも食べさせてあげたいと思った。
しかし、お金は彼に頼まれた食材を買えるくらいしか
持ってきていない。
何かを察したのか、
それとも私の顔に書いてあったのだろうか、
【今回だけは特別サービスよ一切れあげるわ】
【元々は私達夫婦がお願いして食べてもらったから、
お手伝い料金ってことでね】
と コレットさんは微笑んだ。
私がお礼を言う前に、
彼女はウィンクを飛ばして厨房へ行ってしまった。
そんなお茶目なコレットさんに笑みが零れる。
突然
横から肩を叩かれた。
振り向けば、ジルさんだった。
【この絵はさ、
噴水を目立たせたいの?それともサザンカ?】
話しかけてくれた時のふんわりとした笑顔ではなく、
真剣な表情のジルさんに背筋が伸びた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 386人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼也souya(プロフ) - ふわなさん» 感想ありがとうございます。本当に更新してなくてすいません。褒めていただけて嬉しいです！精進していきます…！ (4月5日 18時) (
レス) id: 2dcf8a9402 (このIDを非表示/違反報告)
ふわな(プロフ) - コメント失礼します！言葉選びや表現の仕方が綺麗ですごく素敵です！作者様の無理のない頻度での更新お待ちしてます。 (12月13日 20時) (レス) id: 58ec19c369 (このIDを非表示/違反報告)
蒼也souya(プロフ) - 浪越柊羽さん» 感想ありがとうございます！嬉しいです。優しいお言葉に小躍りしてしまいました。頑張りたいと思います！ (8月27日 6時) (レス) id: 2dcf8a9402 (このIDを非表示/違反報告)
浪越柊羽(プロフ) - 今まで数多くの作品を読んできた中で、この作品が一番のお気に入りです！時間も忘れて何度も読み返してしまいます、、！更新が楽しみです、気長に待っていますね…！ (8月21日 18時) (レス) id: f394f39020 (このIDを非表示/違反報告)
蒼也souya(プロフ) - 星さん» ご感想ありがとうございます！嬉しいです！本当に更新遅くてすいません。本当に申し訳ないです。待っていただけることが何よりもありがたいです！頑張ります！ (2023年3月13日 0時) (レス) id: 34086f5d07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼也(souya) | 作成日時：2021年9月30日 0時
