俺でも日々樹渉になるのは諦める

理性と英智だけはいつになっても持ってる ページ41

公園の時計台。

丁度その辺りに人だかりが出来ていて、すみませんと言いながら人混みを掻き分けて中心へ向かう。
…人だかりの原因の予想はついてる。大方、部長が手品でも見せてんだろう。数秒したら拍手が、またしては拍手がと続いてるから。
この様子じゃ、"普通"は"学院でのいつも通り"ってことなんだろう。…うわ嫌だな。帰りたくなってきた。
注目の的になってる人に大声で｢友也くーん！あなたの日々樹渉ですよ〜っ！｣なんて気付いた途端言われるかも。

などと思いながらも、待ち合わせ時間になってもこれを続かせてたら映画に間に合わないと思い返し、中心へ顔を出せたところで顔をあげた。



友｢………、？｣


違和感は、感じていたけれど。



いつもみたいな、あの人の五月蝿い声が聞こえかったこと。
半狂乱で跳び跳ねる観客じゃなくて、息を呑みボウッと立ち尽くすだけの観客。


友｢……｣


手品はしていた。

けれど、姿見は別人だった。


ガタイが大きいくせに子供っぽい部長と違って、ガタイはあの人より小さいくせに大人っぽいその人。浮世離れの美青年には変わりないのに、全く異質のソレ。
ボーッとしていて、観客じゃない何かを見詰める瞳が

俺を見て、ぱあっと輝いた。


キラキラと瞳を輝かせて歩み寄ろうとしてきて、はっと何かを思い出したかのように一礼。ショーは終わりです、とでもいうように鳩をポンチョへ仕舞い、もう何も動かなくなれば俺のもとへ歩いてきて、にっこりと手を差し出した。


｢行こう、友也くん。｣

友｢……誰です、あなた｣


嫌な気が、というわけじゃないけど。まさか、信じられないと眉間にシワを寄せた。
口調も声も身長も違うし、今までの｢全く正反対な変装｣じゃなかったから

声をかければ、その人はまた笑って、大きく口をあけた

渉｢あなたの日々樹｢いい！黙って、黙れお願いだから！！公衆の面前で大声を出すな！｣…というのは冗談。｣


は？と情けない声をあげれば、たいして興味も無さそうにそっぽを向いて、その人は言った。


｢…今日は、誰かさんのお願いでﾞ普通ﾞになってるんでね。普通は公衆の面前で大声なんて出さないんだよね？確か｣


友｢…………え？｣



…部長の演技については認めてるけど、まさか｢この世のすべてどうでもいい｣みたいな顔する人を演じるとは思わなかった。

…普通って、｢その人の本性｣じゃなくて、｢その他大勢に紛れる一般｣って意味で受け取ったのか


…有り難いけど。

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