No.08_償事 ページ9
『Aじゃない……
今は
……恋ですよ。』
脳内でリピートするAの声。
何とも言えない暗い感情が心の中に渦巻く。
あの時、もっと早く動いていれば______
Aは、今でも無邪気に笑って居られたのかもしれない。
優くんと綾音さんも、大切な娘と別れなくて済んだのかもしれない。
ごめん、A___
全て僕たちのせいだ。
君に恨まれて、憎まれて当然なんだ。
『あ、ウタ!!』
幼い頃のAは 僕の姿を見つけては そう叫んで走り寄ってきたっけ。
『こら!ウタじゃないでしょ!
ウタさんって呼ばないと!!』
そんなAを叱り飛ばしていた綾音さんも、
『すまないな、ウタ。
いつも うちのAが。』
困ったように微笑んでいた優くんも、
____もう居ないんだ。
無邪気な笑顔を見せていたAの姿も、
もう、
全て
____変わり果ててしまった。
「なんでっ……」
なんで 喰種は、生きる事を脅かされなければならないの?
人間じゃないから?
化け物だから?
それとも、
人に危害を加える恐れがある、排除されて当然な存在だから?
A「…お母さん…お父さん」
不意に聞こえてきたAの声が、
重く重く心の中にのしかかる。
四方さんにおぶられたAの姿は、
とてもとても儚くて。
離してしまえば、もう二度と帰ってこない、
そんな感じがした。
眠りながら涙を流しているA。
彼女の髪に優しく触れながら、自分も涙を流している事に気付く。
A____
君は、どんな夢を見てる?
僕は 彼女の頬に伝っていた涙をそっと拭った。
『ウタ〜。
かくれんぼ!!』
昔、よく遊んだなぁ。
かくれんぼしよう、とか自分から言ってきたのに、
いつも必ず、
『………ウタが居ない……。』
そうやって泣き叫んでいたA。
『なんで泣くのー。
かくれんぼするって言ったの、Aでしょー。』
そんな彼女を抱き上げてあやしたりもした。
『だって……
ウタ、居なくなっちゃうかもしれなかったんだもん……』
違うよ、A
僕は 居なくなったりしない。
一番僕が恐れていることは、
君が居なくなる事だよ。
僕の前から、
僕の手が届くとこから、
Aが消えてしまう事が
_____一番恐ろしいんだ。
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ルイ - 続きが気になりますーー!! 更新頑張ってください! (2017年4月5日 23時) (レス) id: 53cd8612df (このIDを非表示/違反報告)
6月ラビット - すごく続きが気になります!更新まってます (2016年10月19日 15時) (レス) id: 2667482819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:eve | 作成日時:2016年1月16日 23時