アストライオスの決断/2 ページ30
「それって、どういうこと?」
口を開いたのは二人ではなく、今まで黙っていた明星先輩だった。詳しく説明して、と抜けるような青の瞳で見つめてくるから、私もしっかりと彼を見据返す。
「今は、時間がないので詳しくは言えません。だけど私の学院での噂は全部、真っ赤な嘘だということは事実です」
え、と遊木先輩が小さく声をあげるのが聞こえた。一方、氷鷹先輩は冷静に問いを投げかけてくる。
「つまり、ニナが嘘をついていたということか?」
「はい」
「……それを、俺たちに信じろというのか?」
困惑、そして新たにふつふつと湧き上がるような怒りを肌で感じた。無理ないよね、だってそれならなんで今まで怪しげな態度をとってたんだって思うじゃん?
「ええっと、それってつまり屋上の事件はニナちゃんの自作自演ってこと?でもそれって、何の為に?」
「要領を得ないな。やはり、詳しく説明してもらおう。それまで、講堂には入らせん」
一応聞いてくれるようだ。それは有難いことだけど、そんな時間はない。でも、かといって無理矢理押し退けてまで講堂に入るとさらに疑われそうだし……。
こういうとき、knightsの皆の口の達者さや機転の利く頭が羨ましくなる。皆みたいに上手く説明出来たら、この場だってすぐ切り抜けられたかもしれないのに。
「ニナがまた何かするかもしれないんです!早くしないと、ライブをする皆に被害が出ちゃうかもしれない……!」
私にできることは、必死に訴えることだけだった。しかし、二人は相変わらず眉間に皺を寄せたり、困った表情を浮かべるばかり。
なす術がない。これ以上何を言えばいいかわからなくてただ唇を噛んでいた、そのとき。
「二人共、通してあげよう」
いつになく真面目な明星先輩の声が、はっきりと響いた。
「明星……本気か?」
「明星くん、Aちゃんは嘘をついてるかもしれないんだよ?」
「それはニナだって同じでしょ?」
遊木先輩が声をつまらせる。それは一種の肯定だった。明星先輩は私の方を向くと続ける。
「今まで言わなかったのは、きっと何か事情があったんだよね。……今は聞かない、後でちゃんと教えてほしい。だから、今は行って」
と、そこで氷鷹先輩が息を吐いた。「明星が言うなら、信じよう」すっと私を見た瞳から、敵意は抜け落ちている。
三人にお礼を言って、私は講堂に足を踏み入れた。
「……Aはいつだって、俺たちを輝かせようとしてくれた。そんなキラキラな心を持ってるのに、悪いことをするはずないよ」
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べベンべエエェェ - また戻ってきました!この作品がお気に入りになってどの小説の設定も星川、というのを使わせて読ませてもらってます!ありがとうございます! (2022年6月9日 23時) (レス) @page29 id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
ベベンべエエェェ - またニナが足を洗って帰って来てほしいかなと思います。続編が出来たらとっっっっぅても嬉しいです (2021年8月4日 21時) (レス) id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
CloveR(プロフ) - 面白すぎて2日で読み終わりました……。(続き気になりすぎて2日とも5:00くらいまで寝れなかった)寝る前に読んだの後悔するくらいおもしろかったです…! (2021年7月29日 3時) (レス) id: f7412586d4 (このIDを非表示/違反報告)
髪様 - ゆうさんと同意見です,完璧ですわあ、、、、 (2020年5月8日 11時) (レス) id: a311e75dfe (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - なんだろう、なんて言えばいいかわかんないんですけど...完璧な小説でした (2020年4月25日 18時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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