コミュニケーション講座/1 ページ30
……信じてみようか。
最初は怖いから、逆らってはいけないと交わした契約だった。
まだまだ、その気持ちは変わらない。けれど、髪だってこんなに綺麗にしてもらえて、手を伸ばしてもらえて、むしろそれを蔑ろにすることが失礼なのではないだろうか？
なら＿＿＿＿。
ぐ、と両手を握りしめる。目を逸らさないで、しっかり二人を見て。
「……な、夏目、くん。……零さん。よろしく、お願いします」
勇気を振り絞ってそういうと、すぐに零さんは笑みを零した。今ごろかよ、と吹き出した彼は、私の頭を乱雑に撫でる。
「任せろよ、A」
その言葉が、すごく頼もしかった。
「……本当に。お前の魔法はすげぇな、夏目？」
よく分からないことを呟いた零さんは、夏目くんに視線を向ける。「くん、もいらないのニ」許したもののまだ納得はいかないようでブツブツ言っていた夏目くんだけれど、顔をあげると微笑んだ。
「まだまだだヨ。師匠には及ばないシ、この子がやる気をもったのは零にいさんのおかげだかラ。ねえ、A？」
ふいに名前を呼ばれて、私は条件反射で頷く。と、さっきから私を撫でていた零さんは夏目くんまでも引き寄せて、わしゃわしゃと撫で始めた。そろそろ痛い……！
「あはっ、嬉しいこと言ってくれるじゃね〜か。このこの〜♪」
「だから零にいさん、隙あらば撫でないデ！ほら、はやくしないと時間がないヨ。日が暮れちゃったラ、この子も帰るとき危ないでしょウ」
さっきとは違い、結構乱暴に零さんを振り払って、夏目くんは私に向き直った。
「まず君には……「こうなりたい」っていう理想はあル？」
「理想？」
「そウ。明るくなりたいだとか、可愛くなりたいだとカ」
理想、と口の中で言われたことをもう一度反復する。明るくなりたいし、可愛くなりたい。誰にも迷惑をかけない、どこにでもいるような、幸せな普通の女の子になりたい。
「……友達が欲しい」
すんなりと口から出たのは、そういう願いだった。
「そういうのは、理想とはちょっと違う気もするんだけド……。まあいいヨ。友達が欲しいのなラ、コミュニケーション能力を磨かなくっちゃネ」
コミュニケーション能力。一般的に、他者と円滑なコミュニケーションをとるための能力を言うらしい。けれど多分、私は「コミュ障」とかいう分類だ。
どうしても他人を前にすると、言葉が出ない。上手く話すことが出来ないのだ。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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