エピソード１５６ ページ18
私はにこやかに笑みを濃くする。今回の計画は、一人ではできないこと。
――北東郡だけでも、西夏郡だけでもダメ。
両地域に赴く者、それぞれが連携をとらなくてはならない。
大がかりな転送魔法を行う、魔導士達は常に魔法で連絡を取り合う。
それは。
その魔導士や、現地の人々を動かす責任者である、私と忠雲も常に連絡を取り合う必要があるということ。
私は左手は彼の手首あたりに添える形にしたままで。
自由な右手で、左の衣の裾の中を探る。
すぐに私の指先が、滑らかな絹の感触に触れる。
そっとその絹を外に出す。
それは山吹色の小さなハンカチ。
きれいに真四角に折りたたんだ布の中心部が少し盛り上がっている。
私は忠雲の掌の上でハンカチを軽く振る。
コロン、と小さな勾玉……ハンカチの盛り上がりの正体が、わたしよりも大きな大人の手のひらにのる。
忠「……。これは？」
「1年ほど前、紅覇お兄様が、紅炎お兄様とともにレラージュを攻略した際に持ち帰った魔法道具の一つです」
忠「魔法……道具、ですか？」
「ええ」
私はこっくりと頷く。
「それはもとは丸い水晶だったのですけれど。遠見の力……遠くの者に意思を伝える魔法が込められたものでした。二つに切り出して、それぞれを勾玉の形に掘らせたのです」
忠「遠くの者に、意思……」
ぶつぶつと、私の言葉を口の中で転がし反芻する忠雲。
はた、と気づいたように、顔が微妙に動く。
見えない前髪の中の目がきっと私を見ている。
忠「二つ……ですか？」
「はい」
私は前髪に隠されている彼の目を見つめるようにして、穏やかに笑う。
「もう一つは私が持っております」
忠「え！？」
驚いて、肩をびくんと揺らす彼が微笑ましい。
「今回の作戦は、西夏郡と、北東郡の連携が不可欠ですから。その勾玉には私のルフモ込めてあります。基本の定時連絡は、魔導士の方々の遠隔透視魔法を用いますが……。何かありましたら、その勾玉に語り掛けてくださいね」
忠「……。わかりました」
忠雲が、顔は私に向けたまま。勾玉を握りしめる。
「ふふ、国のため、一緒に頑張りましょうね！」
そういって、まだ彼の手首に添えていた左手を離した。
覇「話し終わった？ なら、早く出発したいんだけどぉ？」
少し面白くなさそうな、ムスッとした声が真後ろから聞こえる。
いつの間にか、北東郡行きの絨毯から降りて。
紅覇お兄ちゃんが私の後ろに立っていた。
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一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません（汗） 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです！ (2014年10月5日 13時) (
レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね！！楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください！応援しています！！ (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます！ なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが（汗） 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します！(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい！とっても楽しみにしています！ (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます！ 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません（滝汗） オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので！ 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします！ (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一花 | 作成日時：2014年7月25日 20時
