愛すべき、松野一松｡［2］ (ページ16)

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知らない男の正体ページ16

〈一松side〉

Aの家に泊まることになった。

緊張する。

だからだろうが、着替えをAの部屋に置き忘れて浴室まで来てしまった。

一松「…やらかした」

自宅ならまだしも、彼女の実家をタオル一枚で歩くわけにはいかない。

叫ぶか。

…意識して大きい声を出すのは得意じゃない。

考えながら頭を拭いていると、扉を開ける音がしたので振り向く。

するとそこには俺の服を持ったまま顔を真っ赤にして佇むA。

服を俺に渡すことなく扉を閉めてしまった。
大声で謝りながら。

俺は俺でかなり焦っていた。
彼女に全裸を見られるだなんて。

いや、俺は別に平気なんだけど、Aのことを考えると気が気ではなかった。

こんなクズの裸体を見せられて可哀想。

一松「…A？まだいる？」

扉の隙間から出した手に服を握らせてもらう。

その後、足元がふらつきバランスを崩したり、手から服が落ちてしまったりして大きな音を立ててしまった。

落ち着いていないことがバレる…。

A「一松ー、先に上に行ってるよー」

まずい、すぐ謝らないと。

俺は必死で早着替えをし、扉を開けて廊下に出る。そしてAの手首を掴んだ。

謝ると、Aはニッコリ笑って大丈夫だよ、と言った。

Aの笑顔、好き。

??「ねえ飯は…え、その人誰」

Aの言葉の途中で上から声がする。
目を向けると、知らない男がいた。

何あいつ、誰だよ。

A「あっお、弟の耕平です！」

一松「あ、弟…」

恥ずかしい。嫉妬なんてしちゃって…。

耕平「あんた誰」

目つき悪。
すごい猫背だし、言葉に覇気がない。

まるで…

俺みたい、なんて言ったら、失礼になるよね。

一松「え、あの…」

A「と、隣の松野さん家の、四男！松野一松くん！」

耕平「何で隣の家の人がここにいるの」

一松「付き合ってるから」

つい挑戦的な態度をとってしまった。

…だってなんか、こいつ、

あたかもAが自分のモノみたいな顔をしてるから。

A「一松はね、同じクラスで…」

耕平「…あっそ」

弟とやらは舌打ちをして部屋に入っていった。

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新登場人物紹介

黒澤耕平
Aの弟。
学校には通っていない、引きこもり。
雰囲気が一松に似ている。