風に翔ける【究極の絆グリフォン】 (ページ21)

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私がホイッスルを咥えた時。「うおおおお！」と怒号がピッチ全体に轟き渡り、シュウは其方へ振り返る。

視線の先には、松風。両腕を大きく奮って風を孕み、三国へと、ゴールへと駆け出していく。シュートを、止めようとしている。

「三国さん！弾いて！俺、打ちます！」

勝算などないのだろう。唯がむしゃらに、なりふり構わず。汗を飛び散らせて髪を靡かせて、目をギラつかせる。闘争心に満ちている。

…嫌いだ、こういう奴。何にも分かってなさそうな、この感じ。苦手なんだ。

「…あ…！」

地面スレスレを走るシュートの眼前。サイドラインを超えて入ってくる、白い影。松風にもボールにも注意を払わず、地面の草を食んでいる、白い子山羊。…放っておけば、激突する。

「ッ…！」

「ダメだよ、A」

「でも！…ごめん」

駆け出そうとした私の肩を、シュウが掴んだ。今は一マネージャーである私が此処でアレを止めて仕舞えば、エンシャントダークへの不信感を強めてしまうから。…見過ごすしかない。

「そよ風ステップ！」

…シュウが息を呑んだ。

松風は迷わなかった。向かうったのはゴール前ではなく、子山羊の前。必殺技への意識を高め、急加速。…子山羊を抱えて傍に避けた松風を掠めて、ボールはゴールに直撃した。

「あ…」

自分が審判であったことを思い出し、いつの間にか首にぶら下がっていたホイッスルを鳴らす。…エンシャントダーク先制だ。

「天馬！さっきの小さいの、大丈夫か！」

突然の展開についていけない中、三国が松風に声をかける。失点したのに、自分も怪我を負った筈なのに、何故乱入してきた山羊のことを気に掛けられるのか。全然理解できない。

「なんで、こんな…」

「意味わかんないな」

いつの間にか松風の周りに集まって子山羊の背中を撫でる彼らに、困惑しかできない。私の横に立ったカイも、困ったように頭を掻いた。

「試合再開だ！もうお前達の戦い方は分かった。マイナスの力を、プラスに変えてやる！」

いつの間にか山羊を見送っていた雷門、松風が立ち上がり、私達を見つめて言った。

「いや、もう試合は終わりだ。この辺にしておくよ」

「はぁ！？何言ってんのシュウ、どういう…」

反論しようとしてもシュウに口を抑えられ、後半はモゴモゴという虚しい音だけが発される。シュウの考えが読めない。

驚いたのは私だけではなかったようで、エンシャントダークメンバーが全員シュウの元へと集まってくる。