風に翔ける【究極の絆グリフォン】 (ページ20)

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シュウが緩くボールを蹴り出し、カイがバックパス。至極真っ当な立ち上がりだ。序盤動かなかったアンリミテッドシャイニングよりはマシだろう。ただ、全くやる気が見られないだけで。

「(雷門側だったらブチ切れるかもしんない、私)」

適度に選手間の距離をとったパス回し。自陣で相手陣営でも、エンシャントダークはパスを繰り返す。どれも軽く、奪ってくれと言わんばかりの緩いフライボールだ。

「なんだアイツら！やる気あるのか！？」

しまいにはその場でリフティングし始めた林音に向かって、GK三国が苛立って叫んだ…ひえ、私のこと睨まないでくれ。

「プレッシャーをかけるぞ！」

霧野が号令をかけ、DF陣が動く。林音は悠木に向かって高くボールを蹴り上げたが、それを素早く西園が奪った。…アイツ、ジャンプ力が武器なのか。

松風に渡ったボールは着々とゴール前まで運ばれていく。…というより、完全にスルーされている。

松風の特技はドリブルだった筈だが、プレッシャーすらかけられないこの状態では、“どうぞどうぞ通って下さい”と言われているようなものだ。

更に深く斬り込んだ松風の前にシュウが飛び出す。息は乱れていない。

「なかなかやるね」

…また煽りましたこの人。

ーーー

試合の流れは圧倒的に雷門にある。でも、雷門が放ったシュートは絶対にゴールには入らない。エンシャントダークは彼らを阻むことなく、華麗にあしらうように舞い、かわす。

じりじりと時間だけが過ぎていくのが、とんでもなくもどかしいのだ。初めてエンシャントダークと戦った時も、それはまぁ苛々させられた。

「やっと気づき始めたようだな、奴ら」

楽しそうなカイに、シュウは笑みで応えただけだった。カイはボールをシュウにパスし、阻む影山をすり抜ける。

ドリブルに移ったシュウは、雷門に聞こえるようにはっきりと言った。

「僕達エンシャントダークの特性は攻めることじゃない。相手の力を見切り、力を奪うことを得意とする」

「言わばマイナスの力を持つチーム！」

「マイナスの力！？」

驚く松風を尻目に、シュウは一気に攻撃体制へと入る。エンシャントダークはフィールド三方向へ展開。

雷門のDFを物ともせず、ボールを足で挟んで跳躍したシュウは空中からシュートを放った。

雷門を吹き飛ばしていくシュートを正確に受けとったカイが逆サイドへダイレクトパス。更にそこに悠木が、林音が、渾身のシュートを叩き込んだ。

一点。確定だ。雷門には止められない。