・ 夜の街(3) ページ40
「───太宰っ…！」
抑えていた恐怖が込み上げそうになる。
だが、太宰は私に見向きもしなかった。
太宰は倒れた男の目の前に立つまでに、
何度も何度もその男を撃った。
「…っ、がっ！」
流れ弾が当たったのだろうか。
それと同時に美江さんと接吻をしたばかりの男もうめき声を上げて倒れた。
そうして血を流す。
それは度々、私が太宰の真似をして買ったコートへ赤黒く色を付けていた。
私の目の前に太宰が立っていたときにはもう、男は顔すらも分からないほどにされていた。
………太宰が人をここまでするのなんて珍しい
そして太宰はやっと私に視線を合わせるのだった。
その目は何故か真っ黒に汚れていて、私は怖気づいてしまった。
私は太宰にこの男が『プリズナー』の情報を持っていることを教えようとしたのだが…
「……だ、太宰！この人たちは…」
「リイナ、帰るよ」
太宰は私の言葉に合わせるように言葉を発し、私の頭を軽く撫でた。
───太宰が私のことを…っ
太宰に伝えようとした言葉は私の中で伝える間もなく消え去り、喜びからか一気に言葉が出なくなる。
その時だ。
「……あらもしかして貴方、治さん？」
私たちの近くでその光景を見ていた美江さんがあの、美しい声で太宰の名前を口に出したのだ。
「……美江？」
刹那、視線と表情を変える太宰。
「え…」
その二人の反応を見た私の声にならない反応が小さくその場に残る。
太宰と美江さんが、知り合い…？
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作者名：kana | 作成日時：2021年8月23日 20時
