・ 夜の街(4) ページ41
太宰と美江さんが、知り合い…？
私の気持ちも考える間もなく太宰と美江さんは続けた。
「久しぶりですね、治さん。
1年ぶり…でしょうか」
「それくらいにはなるだろうね。
……ふぅん、夜の街に堕ちた君がリイナをも堕とそうとしているってことか」
表情を緩めたばかりの太宰は、また冷たい視線で美江さんを見つめた。
そして彼女を……睨みつける。
「さすが太宰さん、何でもお見通しなのですね。
ふふっ……自分も相手も快楽に溺れるだけで、自分の欲しいものが手に入る。
素晴らしいことだと思いませんか？」
夜の街に私を堕とす…？
どういう意味だろう、美江さんはプリズナーの情報をくれるんじゃ…
「君のその考えなんか到底…私には理解できない、今までも、……これからも」
美江さんを睨みつけた太宰は…美江さんの言葉に動揺することもなく彼女に銃を構える。
「……理解してもらわなくて結構です。私も、貴方がその子を拾った意味の分からない理由など、到底理解できませんから」
ふっと私に笑みを向ける美江さん。
私は彼女の言葉の意味がわからなかった。
「……っ！？
美江さん、なんで貴方が私と太宰のことを…」
心の中で抑えられなかった言葉は心の中で留まることを知らずに最終的に吐き出された。
その言葉に敏感に反応したのだろうか…
大きな手が私の口元に被せられたのだ。
その手は案の定、太宰本人の者。
「少し大人しくしてて」
「………ん、んぐ！」
何するの！！なんて言葉さえも太宰の手に押さえられて口から吐き出すことができない。
「………っ！？」
それと同時に睡魔が一気に私を襲う。
よく見ると太宰はハンカチのようなもので私の口を押さえていたのだ。
きっとそれには睡眠薬でもつけているのだろう。
な、…なんでっ………太宰が………
必死に抑えようとしても重くなっていく瞼。
その時、ぼんやり美江さんの声が耳に届く。
「あら、まだ伝えてなかったのですね治さん」
伝えられていない……？
太宰が、……私に……何かかくして……？
視界も意識もぼんやりとしてきた私の身体は立つ力すらも失い、遂には太宰の胸元にたおれた。
消え入りそうな意識の中で聞こえていたのは美江さんの声だけ。
だが、その言葉すらも聞き取れなかった。
「──────」
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作者名：kana | 作成日時：2021年8月23日 20時
