テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ9)

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２１９．不純。ページ9

車が見えなくなっても私の頭の中は真っ白で、心臓がバクバクとなっていた。

大好きだった智くんとの再会。

大切な和也くんを傷つけた私。

何もかも私を動揺させる出来事で、私を苦しめる試練だと思った。

何の涙かわからない涙まで出てきた。

「A…」
「ごめんね、智くん…」

そして、何も悪くない智くんまで巻き込んでしまった。

もうこのまま、みんな失ったらどうしよう。

たった半年でなくてはならない存在になった和也くんを失ったら、もう私はどうやって生きていけばいいかわからない。

そんなに好きなのに、さっき和也くんを引き留めることも謝ることもできなかった。

それくらい今の私は不純で、まだ智くんが好きってことなんだと思う。

知るのが遅すぎた。

「俺…どうすればいいんだろう、こんなAを放って行くわけにはいかないよ。」

智くんの優しい声が耳に響いた。

智くんの他人思いなところを思い出す。

「どこかホテルとか…予約、してるの…？」
「んや、してない。」

短い時間の中で私は悩んだ。

そしてまた私は不純に染まる。

「今日だけでいいから、一緒にいて…」

私の家の鍵を智くんに手渡した。