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ついさっきまでふざけていた男の殺気の籠った声に、シズカはヒュッと小さく喉を鳴らし、震える手で決意を固めると、マサが口元に置いたハンカチの上にそっと手を乗せた。
それでいいと、同意するようにマサは目元に笑みを浮かべ、震えるシズカの手にゆっくりと自身の手を重ねる。
「ほーら、よくみてAちゃん、君の、おかーさんが、おとーさんを殺 すよ。」
マサとシズカに良く聞こえる様に面白そうに言った男は、ナイフをズボンのポケットに突っ込み、Aの両脇に手を入れ、ぐいっと前に突き出した。
そんなAの視線の先で、涙を流しながら、マサの口元をハンカチで覆い被せ、シズカは叫ぶ。
「Aっ！！目をっ、目を閉じてなさいっ！！」
母の厳しい声に、自身の見た光景に呆然としていたAは、ハッと意識を取り戻し、ぎゅっと目を閉じた。
数分間Aがそうしているうちに、幾度か苦しむマサの声が聞こえてきたが、やがてそれも聞こえなくなり、そこには一瞬、静寂が訪れた。
「……っははははは！！ほんっとーにやっちゃった！！あははははは！！さいっこーだよシズカさんっ！！」
面白そうに笑う男の声に、Aはゆっくりと目を開ける。
ぼんやりと浮かび上がる視線の先には荒く息を吐く母と、沈黙の父。
「おか…あさん？」
絞り出した小さなAの声に、シズカの肩がピクリと跳ねた。
「Aを……Aを返して。」
涙に濡れ、それでも力強い声で、シズカは男を睨みつけながらハッキリとそう告げる。
「あぁ勿論だよ！僕は約束は守るからね。」
そう言うと、男は抱え上げていたAをそっと地面に降ろし、Aの頭を優しく撫でて「ほら、行きなよ。」とAの背を押した。
突然の男の行動に、Aはどうしたらいいのか分からず、一瞬迷ったが、「A！こっちにおいで！」との母の必死の声に反射的に駆け出し、母の腕の中に飛び込んだ。
瞬間、安堵と今までの訳の分からない恐怖が同時に襲ってきて、Aは思いきり泣き出した。
「Aっ……A。大丈夫、もう大丈夫よ。」
優しく穏やかな、いつもの母の声が心地よくAの耳に届く。
だが次の瞬間、再び親子を悪夢が襲う。
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テン(プロフ) - 星猫さん» 星猫さん嬉しいコメントありがとうございます(*^^*)更新が停滞していて申し訳ありません。今後も楽しんで貰えると光栄です♪ (2021年9月27日 21時) (
レス) id: 7837fbad55 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 初めまして！とっても素敵ですね！高評価しました！ (2021年9月10日 23時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：テン | 作成日時：2021年4月20日 0時
