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「あなた……なに、言って……」
「あーあー、怖い顔しないしない！Aちゃんが怯えちゃうじゃん。ねーAちゃん？」
言われた言葉を理解したシズカが鋭い視線を男に向けると、男はグイっとAを自分の方に近付けた。
Aとつないだ手と逆の手にはいつの間にかバタフライナイフが握られている。
月の光を浴びたナイフは鈍く光を反射し、ゆっくりとAの傍に近付いていく。
「……っ？！」
幼いAも、男のその行動には驚き、血まみれで倒れているマサと、シズカの尋常ではない様子に怯えた表情で涙を浮かべた。
「やめてっ！！その子に手を出さないで！！」
「えー？どーしよっかなー？それは、ほら、シズカさん次第でショ？」
シズカの必死の叫びに、まるで関心がないように、男は鷹揚にそう答えると、ナイフをヒラヒラと動かす。
すると、苦し気にマサが言葉を漏らす。
「シ……ズカ、や、れ。」
「マサっ！！そんなっ！！」
「できない」と、声にならない声で呟いて涙を浮かべるシズカに、マサはフッと笑みを溢すと、傍に置いてあった白いハンカチに手を伸ばし、それを自身の口許に置いた。
「わ、るい。守れ……なく、て。Aを……たの、む。シズ……カ。」
「そんな……。」
「だ、いじょうぶ。お前なら……Aを、まも、れる。」
「いや、いやよ……マサ、出来ないっ！」
男に半ば抱きかかえられるようにして掴まれているAは、視線がふさがり、苦しそうな父の声と、悲痛な母の声しか聞こえない。
それでも、二人に自分のせいで良くない事が起きていることは分かった。
「おとーさんっ！！おかーさんっ！！Aは、Aはだいじょうぶだから！！泣かないで！！」
だから、せめて二人を励まそうと、恐怖を必死に押し隠して、精一杯の力を込めてそう叫んだ。
その瞬間、Aが強く握っていたイルカのぬいぐるみに勢いよくナイフが刺さり、切り裂かれた。
ふわっと、白い綿がイルカの中から飛び出る。
「え？」
驚愕するA目の前で、男は器用にAを抱えたまま、イルカのぬいぐるみを何度も刺しては切り裂き続け、遂には原型をとどめないただの布切れと化した。
「っ？！Aっ！！！」
溜まらず叫ぶシズカに、男は少し苛立った様子で先程までとは違う低い声で告げる。
「次は、コイツを刺す。さっさと殺れ。どのみちその男は死ぬんだ。」
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テン(プロフ) - 星猫さん» 星猫さん嬉しいコメントありがとうございます(*^^*)更新が停滞していて申し訳ありません。今後も楽しんで貰えると光栄です♪ (2021年9月27日 21時) (
レス) id: 7837fbad55 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 初めまして！とっても素敵ですね！高評価しました！ (2021年9月10日 23時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：テン | 作成日時：2021年4月20日 0時
