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もう少し彼女に歩み寄り、その髪をひと束手に取る。
黒檀のような黒髪に唇を寄せ、アイドルの時にも使わない、A専用の甘い声で囁いた。
凛「ねぇお願い、受け取って?……俺のバレンタイン」
『な、う、』
この意味がわからないほど、彼女の学は浅くない。何より、案外ロマンチックなものが好きなことを俺は知っている。
計算され尽くした上目遣いで見上げれば、熟れた林檎の出来上がりだ。
ニコリと笑って、彼女が後ろ手に持っていた紙袋を素早く盗み取る。
『あ、ちょっと?!』
凛「はい、これは俺の。Aはこっちね」
じんわりと頰を赤くしたまま睨む彼女に、俺の手作りスイーツが入った袋を差し出す。
じーっと見つめて待っていれば、白く小さな手がゆっくりと紙袋を受け取って試合終了だ。
『ずるい、傷ついたのは嘘じゃないのに』
凛「わかってるよ。それは本当に反省してる」
凛「Aのチョコ、俺に食べさせて?俺もあーんってしてあげる」
『…………。』
凛「ふふ、そんな赤い顔で睨んでも怖くないよ?俺のお姫さま。」
するりとAの手を繋ぎ、優しく引く。
黙ってるくせにすんなりとついて来てくれる彼女が愛しくて、笑みが深まった。
『バレンタインに修羅場になってるなんて絶対私たちだけだよ』
凛「ふふ、俺はいいよ。ありきたりはもう飽きたもん」
『へぇ、経験豊富で何よりです。』
凛「あっねぇ、怒んないでよ。A以外を好きになったことないよ?」
『バカ、矛盾してるよ』
凛「してない。いつか…………いつか言うよ。」
『それも“いつか”?その時が来たらずいぶん長い話になりそう』
凛「長いよ、すっごく。ちゃんと全部聞いてね?」
『わかってるってば。何回聞くの?早くチョコ食べよ』
凛「ふふ、はぁい」
君と俺の、千回目のバレンタインの話。
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気が向いたのでバレンタインデー(激遅)
You are my valentine. の文を使いたいがために書きました。
冷静に考えてみればバレンタインは一生に一度ってわけじゃないから千回目じゃないなって思いました。でも直すのも面倒なので諦めました。
千回目ともなれば好きな子の扱いは手慣れる、でも結局元が受け身がちだから不器用になる感じをイメージしました。
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かお(プロフ) - はじめまして!更新停止は悲しいですが、また更新して下さるのを待っています! (2021年6月26日 11時) (レス) id: 16a5bce890 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春 | 作成日時:2021年4月1日 0時