10話 ページ12
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『チッ……。あのライオン男……。』
みんなと解散して寮に戻ってきたボクは、部屋に置いた大きな鏡を見て舌打ちをした。
寝違えたと思ってた首筋にはそれはそれは濃い歯型が残っていたからだ。
油断した。アイツが獲物をそう簡単に離すわけがないのに。
『アイツ……、覚えとけよマジで。』
「ヒイッ……。」
自分でいうのも何だが、珍しくイライラしているボクを見て他の寮生が驚いているようだった。
なんだよ、怒ったっていいじゃんかよ。
「ちょっとA！そんなに眉間に皺を寄せたら、美しい顔が台無しよ。」
『……！ヴィル。』
寮生の騒がしさに気づいたのか、ヴィルがやってきてボクの顎を持ち上げた。
その美しい仕草に思わずキュンとしたが、胸に留めておくことにした。
「全く……。来なさいA、ハーブティーを淹れてあげる。」
『うん、ありがとうヴィル。』
ヴィルはやっぱり優しい。その優しさに、いつも甘えきってしまうんだ。
「ほら、飲みなさい。」
『……。美味しい。』
「当然よ。このアタシが淹れてるんだもの。」
『ねえ、ヴィル。今日はヴィルの部屋で寝てもいい？』
「あら、今日はいつにも増して甘えん坊ね」
図星を疲れて縮こまるボク。ヴィルはそれを見てふっと笑い、スっと立ち上がると自分の部屋のクローゼットを除き始めた。
ボクが首を傾げていると、1着の服を持ってきた。
「泊まるのは良いけど、今夜はアタシの着せ替え人形になってもらうわ。」
『もちろん。それでヴィルと居れるなら。』
それからはまあ大変だった。
超フリッフリのドレスを着せられたり、ピンク色のワンピースを着せられたりと、羞恥心が爆発しそうになるほど。
「さすがアタシのA。とても美しいわ。」
『……もし、もしさ。』
ボクはそう言いながら上目遣いでヴィルを覗き込むと、ヴィルは一瞬動揺したように見えた。
ヴィルはドレスを着たボクが好きなんだろうか。
それならきっと……
『もし、ボクが女の子だったらヴィルはボクを好きになってた？』
「……馬鹿ね。アタシはアンタが男でも女でも、変わらず愛してるわ。もちろん、今この瞬間だってね。」
ヴィルは儚げに笑ってボクにキスをする。
今この瞬間は、ボクだけのヴィルだ。
その感覚がとても心地よくて、長いキスでも自分が息をしていた事さえ忘れられる。
ボクが求めていたのは、コレだ。
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林檎と珈琲豆(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます！不定期になるかもしれませんが、面白いと思って頂けるような話を頑張って更新していきますので、これからも読んで頂ければ嬉しいです！ (2022年8月6日 23時) (
レス) id: 28265de769 (このIDを非表示/違反報告)
紅(プロフ) - とっても面白いですこういう小説待ってました！！更新楽しみにしてます、頑張ってください！！！ (2022年8月6日 21時) (レス) id: 4c9728094c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：林檎と珈琲豆 | 作成日時：2022年8月6日 16時
