面白いヤツ ページ8
〜御幸side〜
授業が終わって、保健室に行く付き添いを誰かに頼もうと探していると、友達と教室へ戻ろうとする速水を見つけた。
あ、アイツでいいや。
オレは近くまで行って、トントンと肩を叩いた。
振り返ると、速水はぎょっとした顔で
｢…み、御幸君？｣
と言った。
御｢保健室、ついてきてくんねぇ？｣
｢え…｣
御｢その氷嚢返すついでにさ｣
速水は少し考えた後、横にいた友達に言った。
｢ごめん朱里、先に戻ってて｣
そいつは、何故かニヤニヤして呟いた。
朱｢はは〜ん…そういうこと｣
｢？｣
朱｢クラス1のイケメンと早速そういう関係に…さすがA｣
その言葉を聞くと、速水はみるみる赤くなった。
｢！？…ち、ちがっ…！｣
朱｢ファイティン！｣
朱里と呼ばれたそいつは、勘違いをしたまま去っていった。
｢えっと…あ、あんな子なの！だから…その…気にしないでね！｣
顔の前で手をブンブン振りながら言う速水。
御｢そんなに必死になんなくても分かってるって｣
｢え、あ…｣
速水は少し俯いて、持っていた氷嚢で顔を隠すように冷やした。
そんな姿が小動物みたいで少し可愛いと思った。
保健室に着くと、先生から｢また来たの？｣と言われた。
苦笑いしながら事情を説明して、速水と同じく氷嚢を貰った。
冷たい氷嚢を頭の右側に当てながらふと隣を見ると、速水はやはり俯いて歩いていた。
…耳が赤い。
オレは持っていた氷嚢を速水の耳に当てた。
｢ひゃあ！？｣
御｢うおっ｣
速水が肩を大きく震わせたので、オレまで驚いて声を上げてしまった。
オレの方を見る速水の表情が何とも言えない表情で、思わずプッと吹き出してしまった。
｢なっ、何で笑うの！？｣
御｢いや…悪ぃ…フフッ｣
｢悪いと思ってないでしょ！？｣
御｢思ってるって…ッふ…｣
｢もう！｣
怒った表情もなんだか面白くて、オレは教室に着くまでずっと笑っていた。
授業が始まっても、オレはずっと窓の外を眺めていた。
これはいつもやっていることだけど、今日は考えていることがいつもとは違う。
あんなに表情がコロコロ変わるヤツはなかなかいない…ってか初めて見たな…
それに、他の女子とは違ってキャーキャー言わねーし。
…結構面白いヤツだな、アイツ。
オレは、いつのまにか速水の方を見ていることにしばらく気づかなかった。
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作者名：みゆき | 作成日時：2016年10月10日 0時
