好都合 ページ28
〜御幸side〜
…ヤバイ。
あれはヤバイ。
直視できない。
オレからメイド服を受け取った速水は、少し頬を染めてそれを体にあてた。
本人は心配そうな顔をしていたが、それはもう言うまでもないくらいに似合いすぎていた。
女子ですら見とれるレベルだ。
さらにその顔と仕草で男はイチコロだろう。
おかげでオレは目を逸らすことしかできなかった。
女｢…Aちゃんはやっぱりそれ着ない方がいいかも…｣
男｢そう…だな…｣
｢え？｣
…確かに速水は着ない方がいい。
というかもう絶対着るな。
着てほしくない。
いや、着てほしいのは着てほしいけど…
御｢メイド長から平社員に降格だな｣
｢ええ！？｣
女｢そうせざるを得ないというか｣
｢ええ〜…｣
速水を除く全員一致で速水のコスプレなしが決まった。
御｢よかったじゃねーか、コスプレ嫌だったんだろ？｣
｢うん…まあそうなんだけど…｣
御｢そういや、メイド服着ないってことは裏に来るってことだよな？｣
｢そう…なるのかな？｣
ということは…
｢…え、私料理するの？｣
御｢安心しろ、こき使ってやるから♡｣
｢やだ〜｣
確か速水は料理がそこそこ上手かった気がする。
オレほどではないけど。
こき使うつもりはないが、もしできるんだったら速水を副料理長的なポジに指名したい。
速水がキッチン組にいれば、料理もよりスムーズに作れるだろうし、何よりオレのモチベーションが上がる。
速水の降格は、オレにとってかなり好都合だったのかもしれない。
｢…幸君…御幸君？｣
御｢ん？｣
｢どうかしたの？｣
衣装やらメニューやらを片付けて、教室の掃除をしながら考え事をしていたら、いつのまにか手が止まっていたみたいだ。
御｢いや…速水のメイド姿が目に焼きついて…｣
｢…も、もう忘れて！｣
よほど恥ずかしかったのか、速水は一気に真っ赤になった。
御｢んなこと言われてもあんなの見せられたら…｣
｢似合ってなかったのは分かったから！｣
御｢そうそう、似合ってな……ん？｣
…あれ、まさかコイツ無自覚？
御｢速水…お前、誰よりも自分のこと分かってねーな｣
｢え？｣
速水はキョトンとした顔でこっちを見た。
ほら、そういうとこなんだよ。
…そういう顔を、他のヤツに見せてもらっちゃ困るんだ…
平常心を保っていられる自信がなくて、オレは彼女から目を逸らした。
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作者名：みゆき | 作成日時：2016年10月10日 0時
