レアなもの ページ26
それから月日は流れて。
高校生活最初の夏が終わった。
もちろん私は地区予選を見に行った。
青道と稲実が準決勝で当たって、どっちを応援すればいいのか迷ったりもした。
結果は稲実の勝ちだったけど、私はかなり複雑な気持ちで球場を後にした。
甲子園出場を決めた鳴からは、｢すごいでしょオレ！イェーイ！｣というだいぶ語彙力が低いメールが送られてきた。
確かに鳴が甲子園に行くのは嬉しいけど、やっぱり御幸君達に行ってほしかったな…と思いながら返信した記憶がある。
そんなこんなで、激動の夏は終わりを告げた。
そして今は秋。
文化祭シーズン真っ只中。
委員決めの時に空を眺めていた私と御幸君は、ほぼ強制的に先生に文化祭の実行委員にされた。
｢何故…｣
御｢空なんか見てたからだろ｣
｢そっちこそ｣
御｢違う、オレは雲の数を数えてたんだ｣
｢空見てるじゃん｣
御｢バレたか｣
愚痴を呟くものの、クラスの出し物自体はもう決まっている。
メイド&執事喫茶。
クラスの4分の3がこれに賛成した。
…陰謀のにおいがする…
私と御幸君は｢実行委員だから〜｣とか何とか言われてメイド&執事長(？)みたいなものにもなってしまった。
御幸君に関しては料理上手が発覚しているので、料理長(？)にもなっていた。
どうしてこうなった。
…まあ、御幸君のレアな執事服姿が見られて得するといえば得するんだけど…
いや、でも…
｢何でメイド服とか着ないといけないの…｣
御｢メイド服着なかったらメイドじゃねーじゃん｣
｢そうだけど…｣
恥ずかしすぎる…
御｢オレは速水のメイド服見てみたいなー｣
｢なっ…！｣
御幸君はニヤニヤしてこっちを見ている。
御｢それでアレだろ？｢お帰りなさいませ、ご主人様♡(裏声)｣とか言うんだろ？｣
｢いっ、言わないし！｣
御｢言ってほしいなぁ〜｣
｢言わない！絶対言わない！｣
私が真っ赤になっているのを見て、御幸君はとても楽しそうに笑った。
ほんと性格悪い！
…でも、その笑った顔が素敵とか思ってる私もどうかと思うけど…
｢私も御幸君の執事服姿見てみたいなー｣
御｢い・や・だ♡｣
｢嫌って言っても着せるからね！絶対！｣
御｢こえ〜｣
私たちはしばらく教室でギャーギャー騒いでいた。
その様子を朱里と倉持君が見ているとも知らずに…
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作者名：みゆき | 作成日時：2016年10月10日 0時
