申し訳ない ページ20
〜御幸side〜
試合が終わって帰ろうとする速水の姿を見ると、無性に引き止めたくなった。
何故そう思ったのか自分でも分からないが、とにかく適当に理由をつけて部活が終わるまで待ってもらった。
…のだが。
日中はかなり暑かったのに、日が暮れると一気に気温が下がって逆に寒いくらいだった。
しまった、速水待たせるんじゃなかった…
アイツ半袖だったもんな…
オレは部活が終わると、急いで部屋に戻ってジャージ片手に走り出した。
速水は同じ場所に立っていた。
自分の肩を抱いてブルブル小刻みに震えている。
…ほんとに申し訳ない。
ビュオオオ…
｢さっむ〜〜！｣
御｢悪ぃ速水！｣
｢うひゃあ！？｣
後ろにオレがいると思わなかったのか、速水は振り向いたままの姿勢で固まった。
御｢寒かっただろ？｣
｢え、あ、いや全然｣
御｢嘘つけ｣
オレは速水に近づいて持ってきたジャージを被せた。
｢えっ｣
御｢もう遅いから送ってく｣
｢で、でも…｣
御｢いいから黙って送られろよ｣
｢…｣
速水は俯くと、ジャージの襟元をキュッと掴んだ。
心なしかその耳は赤い。
…そんなに寒かったか…
待たせるんじゃなかったな…
｢…あったかい｣
御｢え？｣
声が小さくて聞き取れなかった。
｢…何でもない｣
御｢何だよ気になるじゃん｣
｢何でもない！｣
速水はちょっと怒ったように大股で歩き出した。
御｢あ、ちょっ待てよ！｣
オレも慌てて後をついていった。
御｢速水っていつも歩き？｣
｢そうだけど…どうして？｣
御｢何となく聞いてみただけ｣
｢ふーん｣
一瞬、ずっとこうやって並んで歩いていたいと思った。
でも疲れるし、速水が家に帰れないからそんな考えはすぐ消し飛ばした。
｢ここが私の家｣
御｢へー｣
2階建ての一軒家か…
｢御幸君、送ってくれてありがとう｣
御｢いや、元はと言えばオレのせいだし｣
｢…あ、そういえば何か話があったんじゃ…｣
御｢あー…いや、また今度でいいわ｣
｢そう？…じゃあまた来週、学校でね｣
御｢ああ｣
オレが手を上げると、速水は手を振ってくれた。
口元が緩んでいたのに気づいたのは、前を向いて歩き出した後だった。
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作者名：みゆき | 作成日時：2016年10月10日 0時
