才能 ページ16
鳴｢んじゃ、まずはオレとAちゃんね！｣
公園に着くなり、鳴は翔からグローブとボールを半ば奪い取る形で受け取った。
｢はいはい｣
鳴｢いっくよー！｣
鳴は大きく振りかぶって…
…振りかぶって！？
｢ちょ、危なっ…！｣
考えるよりも先に左手が出ていた。
バシィッ
｢ったぁ…｣
左手がジンジンする。
翔｢ね、姉ちゃん…！？｣
翔がこっちを驚きの目で見ていた。
翔｢何で今の捕れるの！？｣
｢え…｣
何でって言われても…
咄嗟に出たんだもん。
鳴｢さっすがAちゃん！｣
翔｢え、ちょっとさすがどころじゃないって！｣
｢今のスゴすぎ！｣と翔は大絶賛。
まあ、確かに今のは私の反射神経に感謝だけど…
鳴｢Aちゃん早くー！｣
｢え？…ああ、ごめんごめん｣
鳴の声で、左手のグローブにボールが入っていることを思い出す。
もちろん、私は鳴みたいな豪速球が投げられるわけないので…
｢はーい｣
普通に返す。
鳴｢いっくよー！｣
｢え、ちょっと待っ…！｣
私が気づいた時にはもう左手が痛くて。
翔｢だから何で捕れるんだよ！？｣
｢し、知らないよ！｣
何故か怒っている翔に言い返しながら、ボールを投げる。
鳴｢いっくよー！｣
｢だから待っ……ったい！｣
翔｢姉ちゃん気持ち悪い！｣
｢ひどい！｣
鳴にボールを投げ返しながら、翔に向かって叫ぶ。
確かにここまでくるとちょっと怖いけど…
…私って意外とキャッチャーとかの才能あるのかな…
鳴｢いっくy…｣
｢ちょっと待って！｣
鳴｢？｣
また間髪入れずに投球フォームに入る鳴に、静止の言葉をかける。
｢交代で｣
鳴｢ええ！？もう！？｣
｢翔、パス｣
翔｢オレ鳴の球止めれる自信ねーんだけど…｣
ブツブツ文句を言う翔にグローブを押しつけて、少し離れた所に行く。
さすがにあの豪速球を受け続けるのは辛い。
しかもグローブだったし。
ミットだったらちょっとは楽だったかな…
私は左手にミットをはめて、閉じたり開いたりしながら考えていた。
翔｢鳴！もうちょっと手加減してくれよ！｣
鳴｢やーだね！｣
向こうの方でそんな言い争いをする2人。
絶対私と翔より鳴と翔の方が兄弟っぽい。
改めてそう思った。
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作者名：みゆき | 作成日時：2016年10月10日 0時
