【おそ松さん】蝉時雨と畢り。

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予定どおり待ち合わせ5分前に着き、時計塔の傍に向かって歩く。


自分と同じように浴衣を着た女性と男性が周りにちらほらといて、私と一緒で誰かと待ち合わせしてるのかなとぼんやり眺める。

ただ何か違う所があるかと聞かれれば、彼らの待つ理由がデートをするためということくらいだろうか。

まぁ私みたいにそうじゃない人も中にはいるだろうけど。


携帯を取り出して時間を確認する。




「うん、遅刻かな」




勉強会の時は遅刻せずに来たのに、こういう時は遅れてくるなんて…

まぁ彼らしいっちゃ彼らしいけど。




「………Aちゃん！」

「っ！！……びっくりした、、」

「へへっ、サプライズ成功！」

「……………もしかして、もう前から来てた？」




「ふふ〜ん、まぁな〜！」とドヤ顔で言われて少し悔しくなる。いや、かなり悔しい。


でも、いつから彼はここに来てたのだろうか。

さっき来た時は彼の姿は見えなかったのに。

もしすごい早く来てたのなら、私は悔しいなんて思ってはいけないな…




「わざわざ驚かさなくてもいいのに」

「いや〜なんかこういうのってカップルっぽくて良くね？」

「……私達カップルでも何でもないんだけど。」

「まぁまぁそういう細かいことは気にしない気にしない！」




いや、細かいとか細かくないとかそういう問題じゃ…


そんな軽い言葉を放った後、彼は突然黙って私の姿を上から下までくまなく見つめてきた。

そんなにじっと見られると逆に少し恥ずかしくて、頬がだんだんと熱くなっていくのがわかる。


もしかして、似合わない…とか思ってるのかな、




「Aちゃん…」

「……なに、？」

「………………すっげぇ可愛い」




彼はいつもこうやって、いきなり大きな爆弾を落としていく。


そんな顔して、そんなこと言わないで。

心臓も、頭も、体も、全てが痛くなる。




「いつもと違うその髪型も、
この日のために着てくれたその浴衣も、
滅多にしないその化粧も、

全部全部、すごいAちゃんに似合ってるよ」




目を細めながら、1つ1つ丁寧にゆっくりと

髪を見て、
浴衣を見て、
顔を見て、

ふわりと笑った。


ねぇ、今、

どんな気持ちでそう言ったの。
どんな気持ちで私を見つめてるの。
どんな気持ちで微笑んだの。


全てがわからなくて、辛くて、


でも1つ、確かに言えることがあるとすれば、



心の底からそう思って言ってくれたんだってこと。



優しい彼のことだから。




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