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夏休みに入って何日か経った。
特にいつもと変わらず家でのんびりと過ごす毎日。
特別面白いことがあるわけでも楽しいことがあるわけでもない。
ブーー、ブーー
夏休みの課題でもやろうかなぁと適当に考えていると、突然机の上に置いていた携帯がバイブ音を鳴らした。
連絡をしてる相手はもちろん、こんな暇人にはいるわけがなくて、誰だろうと不思議に思いながら手を伸ばす。
「ぁ、」
スマホの画面を見て、思わず声が出た。
苗字だけが表示されているそこ。
なのに、それだけで誰からかなんてわかってしまうのはどうしてか。
少し迷って応答ボタンを押した。
「…もしもし」
〈あ、Aちゃん?〉
「うん」
〈良かった〜出てくれないかと思った〉
「出てくれない」と言われて、ビクッと肩が少し跳ねる。
感の鋭い彼のことだから、もしや…?なんて思われないように「どうしたの?」と素早く話題を変えた。
窓から聞こえる蝉の声が相変わらず煩い程に耳に響く。
〈夏祭りのことなんだけどさ、俺、電話すんのすっかり忘れてて、、ほんとごめん!〉
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたね」
〈……Aちゃん、もしかして、忘れてた?〉
「………………夏祭り行くのは覚えてた」
〈やっぱり忘れてたんじゃん!〉
「でも”夏祭り”のことは覚えてたよ」と言うと〈……っ、くそ、怒りたいのに怒れねぇ、、〉と電話越しにわけのわからないことを呟かれた。
ほんと、彼は弟さん達に接する時と同じくらい私に対しても、甘い。
〈…って、俺が言いたかったのはそーゆうことじゃなくて!〉
「…?」
〈待ち合わせの時間とか決めたかったの!Aちゃんは何時がいいとかある?!〉
「え、あ、ううん、特にないよ」
〈じゃあ5時にアカツカ公園待ち合わせでいい?〉
「……うん、いいよ」
中学の頃よく彼らと帰りに寄り道していた公園。
その名前が出た時はあぁ、あの頃はもっと気楽に楽しく過ごせてたのになぁ、と少ししんみりとしてしまった。
夏祭りまであと1週間。
電話越しでは話が纏まって落ち着いたのか〈楽しみだな!〉と元気な声が聞こえている。
浴衣でも来ていこうか。
少しくらい可愛くしてみたり、オシャレしてみたり…しようかな。
髪型もちょっと変えたりとかして。
浴衣、どこに仕舞ったっけと考えながら「うん、そうだね」と返した。
できれば彼と過ごす日は、どんな時よりも楽しくしたいから。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時