磔/2 ページ25
その病は、必然であり、絶対である。
「あんたがうちに来るようになってから、お師さんも様子が可笑しいし、ほんま、なんなん」
その言葉に、途方も無い理不尽を感じた。きっと、私よりも全て忘れている彼の方がそれは強く感じているだろう。
彼の激情を見て、漸く気付いたのだ。
私は、今の彼からしたら平穏を脅かす悪なる存在に他ならない、ということに。
絶望の思いを乗せ、みかくんと呟けば、それが彼の反感を勝ったらしく彼は瞳を眇める。
___嗚呼、そんなの、
「そうやって!…そうやって、名前で呼ぶのも分からんし、おれはあんたのこと知らんのになんでそんな親しそうに話しかけんの!」
そ、ん、な、の
「あんたが、居らんかったら今も変わらずに幸せやったのに、あんたが来てから、おれは、」
___私が、馬鹿みたいじゃないか!
無意識のうちに手が出ていた。
頬を張った後に、激しい後悔が押し寄せたが、訳が分からないように惚けた顔をする彼を見て奥歯を噛み締める。
君が、私をこんな風にしたんだ、君の勝手が、私を我儘というエゴに
何度嫌悪しても、後悔しても、鼓膜にはか細く話す彼の声がこびりついて離れない。オマケに瞼の裏にはいつだって、気の抜けた顔で笑う君が映るのだから、忘却なんて夢のまた夢だ。
逃げるように、鞄をひっ掴み外へ出る。
もう、もう二度とあんな酷い人に恋などするものか。__そう、心に誓って。
大通りに行けば、信号機は赤を示していて、それに丁度いいと、口元が三日月に歪んだ。
ステップを踏むように歩く、それは、彼の家へ向かう時よりも遥かに軽い足取りであったに違いない。
パッパラー、なんて、耳元で大きく鳴り響くクラクションにも負けない声量で、今の思いの丈を叫べば、この世に残す未練なんかも全て置き去りに出来る気がした。
「バカヤロ___!!!!」
暗転
16人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました! (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました; (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…!コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…! (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました! (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ