【怪物事変】七転八起とは言うけれどこれは難しい (ページ16)

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15話~普通は聞くところ~ ページ16

野火丸side

まだまだ食べ足りないのか、無自覚にも頬を赤らめて無表情なまま蕩けたような顔で僕を見上げるA

耳を触ればよく分からない表現法で拒否られてしまいましたね

この子、今は外ですし一応初対面という形だから良かったものの……無知というのは本当にタチが悪いですね

　
貴女「野火丸の感情美味しい……ずっとお腹すいてるからずっと食べれる」

野火丸「僕の負の感情加減じゃないですかそれ、僕にストレス貯めろっていってるのと同義ですよ」

貴女「すとれす……？」

　

　

あぁそうでしたね、Aは元々喧騒を知らないのもありますし日常生活に支障をきたす程度に記憶を出来ないんでしたっけ

ならストレスを知らなくても当然、ですか

　

　

　

貴女「………思い出し怒り？」

野火丸「あぁ、負の感情を増幅させ食べるのですから他者の感情の変動には敏感なんですね

どうぞご飯ですよ〜」

貴女「………！！！」

　
無表情ではあるもののよく見れば少し雰囲気が明るくなったAに自然と頬が緩む

そうですね……もし君が僕の傍に居ると言うのなら暫くは空腹感に悩まされることは少なくなるでしょう

　

君を見る度に不甲斐なさと彼らへの怒りが振り返してきますから

　

　

………というかこの子、僕が犬神の特性について知っているということにいっさいツッコミませんでしたね

僕の知っている限りではAは昔から聡明で頭が良い子だったので何かしら言ってくるかと思ったんですが……やはり人格形成が甘いからなのか

一切触れてきませんね

普通なら誰しも気になるところだろうに

　

…………雪山にいてもなお、汚れることがなかったその瞳が、あんな不届き者のせいで濁ってしまうなんて

本当、悔いても悔い着れないですよ

まぁ中身は多少人格崩壊してすこーし空っぽになってしまいましたが、まだ純粋でいい子そうなので安心しましたが…

　

　

貴女「………ここまでで良い、大丈夫

ありがとう野火丸」

野火丸「そうですか？気を付けてくださいね〜」

貴女「うん、またね野火丸……今度会う時も美味しいの食べさせて」

野火丸「！はい、良いですよ」

　

軽く手を振って袋を引き摺らないように慎重に持って歩き出すAの背中を見守る

ま、僕に拘り始めてくれたのはいい進歩です