思春期、赤司君の憂鬱。

憂鬱と悲劇 ページ7

『……赤司、きゅん？』


『うあああああごめんなさい赤司様ちょっと噛んでしまっただけてすすみませんんん』


『…A』


『はいい』



『無駄口を叩く暇があったら今すぐ風呂に入れ』






.






ホテルのスイートルームかと思わずツッこんでしまう程大きいバスルームだが、もちろん私はスイートルームなんかに泊まったことはない。

ただ、比べる対象がそれしかないだけで。



それにしても、ちょっと、あの時の顔は。
怖かったですよ赤司様。

瞳孔をカッて開く、的な。
オーラが怖いと言うか、流石鬼主将。



ここに鬼主将はいないので、気の済むまで独り言を呟くことができる。
もし聞かれてたなら、外周50周なんて怒鳴られる可能性は大いにある。


あの鬼さんは、女子だろうと男子だろうとお構い無くだからね。
いや、でも普段は物凄く優しいんだよ。

ただ、部活になると人が変わるだけで。






湯加減は最高。
なんだか豪勢に使うのも申し訳ないし、と高級そうなシャンプーに手をかけて、すみませんと謝る。

別に誰が聞いている訳でもないけど、我らが主将のシャンプーをお借りするということは、相当なことだと思う。
恐れ多いです。



それはもちろん、ゆっくりお湯に浸かることも出来ず。
それよりもこれ以上ここにいたら何だか逆上せてしまいそうで、立ち上がった。


それにしても、なんだかぽーっとして。
ディズニーランドのホテルに泊まったみたいな、実感がないあのふわふわした感じ。

髪を絞って、ドアに手をかけたところで気付く。






「…バスタオル、と、下着、…」






血の気が引いた。
さっきまでの暖かな気分は一気に消え去り、冷静になる。



えっと、服は一式全部脱いで。
そのまま持ってきてしまったバッグの上に置いて。

それで、…


あれ。じゃあ、バスタオルは。
替えの服とかも、ないですよね。



あれ。

どうしよう。

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