227話 ページ30
「あら、そのまま逃げると思ったのに。」
彼女はやはり余裕気だ。どうして彼女はここまで屈強で動じないのか。
「まだ話は終わってないよ。あなたが私を陥れた理由は分かった。でもどうして皆を巻き込んだの。」
皆、それはつまりキセキの皆のこと。私はそれがずっと疑問だった。私が憎いのなら私だけを苦しめればよかったのに。
「最初はね、醜くも嫉妬よ。人気者から囲まれて、大事にされてるあんたに嫉妬した。でも途中から、そんな感情は消えた。だって皆、馬鹿なんだもの。だから、上手く利用出来ればこっちのものだと思ったの。」
淡々と冷たく言い放つ彼女を見て、私は憤りを感じた。
「なに、それ...」
「駒よ。あんたを苦しませる為の、私の駒。」
その言葉が私の頭の中でぐわんぐわんと響いた。
私を苦しませるための駒?そんなくだらない理由で、彼らはこの事件に巻き込まれたというのか。
「ふざけないで!」
息が切れるほどに私は叫んだ。
「皆を駒呼ばわりすりなんて。皆は物じゃないのよ!?」
「物よ。」
その声に、ヒュッと息を飲んだ。
「実際そうだったじゃない。私の思い通りに動いてくれた。」
「だからって、物扱いするなんて酷い。私が憎いなら、私だけ苦しませればいいでしょ!」
「それじゃあ面白くないもの。」
次々と愛ちゃんの口から漏れる言葉に衝撃を受けて、私は黙り込んでしまう。
「あんたの苦しんでる姿、最高だったわ。」
彼女はそう言って、扉の方へと歩んでいく。
「待て。」
その時、今までずっと黙っていた征十郎が口を開いた。
「お前、本当にそう思っているのか?」
その問に、彼女はピタッと足を止めた。
「当たり前でしょう。」
こちらを振り向くことなく放たれたその声は、震えているように聞こえた。
「私はあんたが大嫌い。あの女から生まれたあんたを、岡上Aという存在を、私は認めない。」
そう言い放つと、彼女は大きく息を吸い、吐き出すと再び足を進め屋上を去った。
彼女が屋上を後にしたのと同時に、ザアッと、夏らしくない、涼しい風が吹き抜けた。それは何かが終わった合図かのよう思えた。
その瞬間、ガクンと全身の力が抜けて、私は地面に座り込んでしまった。
「Aっ、大丈夫か?」
「こ、怖かった...」
安堵の声が思わず口から漏れた。
「よく頑張ったね。」
この時、私が泣くことはなかった。私は少しでも強くなれただろうか。
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彗(プロフ) - さっき読みはじめて今読み切りました。号泣です。素敵な作品をありがとうございました (2020年2月23日 1時) (レス) id: cf7fdf27c9 (このIDを非表示/違反報告)
みのもんた(プロフ) - ぁ、、あぁ( ;∀;)愛ちゃん、、、うわぁぁああ(TTTTT□TTTTT)もぅいい話すぎますよぉ!!なんかもぅすごい引き込まれました!!泣才能ありますよ!!まじで!そーゆぅアニメ見たいですほんとに。ぁあー読み終わっちゃったのがすごく残念。。これからもファイトです! (2017年10月22日 15時) (レス) id: fd2eec93e7 (このIDを非表示/違反報告)
すふぃ - あぁ、目からポカリが、、、、 (2016年10月23日 18時) (レス) id: 38e1760aba (このIDを非表示/違反報告)
夕凪*゚ - すごくいい作品で一気に読んでしまいました…!!本当に感動で涙がとまりません( ; ; )素敵な夢をありがとうございました!!! (2016年4月3日 1時) (レス) id: ca1c6f1dc0 (このIDを非表示/違反報告)
白雷(プロフ) - すごくいい! (2015年8月22日 11時) (レス) id: 55569623d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2014年2月28日 19時