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第194話「女王の加護」夢主 ページ3

「……それは、ほんき?」

不思議そうに少し頸を傾けて、女王は私に問いかけてきた。

「当たり前でしょう?中也さんは太宰さんと、同じぐらい大切な方なの。……あの日、私を見つけて下さったのは中也さんだもの。中也さんが居なければ……今、私は此処にこうして立ってなんていられなかった筈だし、何より……とっても、優しい人だから。」

私は、確りと女王を見てそう答える。

確かに、一番慕っているのは太宰さんで、それは揺らぐことのないであろう事実だ。
けれど、中也さんは私の為だけに贈り物を用意して下さった。
私の為に、笑って下さった。
私を守ろうと、色々して下さった。
それだけだ。
それだけなのだ。
でも、私にはそれがとても嬉しくて仕方がなかったのだ。
厭になる程血の香りが染みついている私が、「普通の女の子」で居続けられているのは、中也さんのお陰なのだ。

「……だから……いや、私が、中也さんが好きだから。だから、護りたいと思う。」

私に出来ることが何も無くても、その人の為に何かしたいと思うのだ。
そんな私に、女王は組合の金髪の青年と話す太宰さんの方向を見詰めると、苦虫を嚙み潰した様な表情で、声色で私に問いかけた。

「……それは、だざいをきけんにさらしたとしても?」
「太宰、さん?」

女王の言葉に、私は思わず聞き返す。
すると、女王はぽつぽつと私に話し始めた。

女王の加護、という私の異能の力の一つを。
それは、女王の壁のように確かなものではなく、謂わば「運命に影響を与える」程度のもの。
私の望む未来が起こる確率が、ほんの少し上がる程度のもの。
……でも、私が想定する「最悪の結果」は起こらないし、起こったとしても打開策が確実に残されているというもの。

女王曰く、今の私は無意識に太宰さんにその加護を使っているらしい。
だから、太宰さんの自i殺は今迄成功していないのだと云う。
確かに、思い当たるところはあった。
「太宰さんだから」と特に考えずに受け入れてきたが、今考えれば毒は入れ替えられていたり入水は失敗に終わったり、頸を吊ろうとしようとすると支えが折れてしまったり、他にも色々。

「……そのかごが、だざいからきえることになるわ。いちじてきなものだったとしても、にんげんなんてすぐにしんじゃうもの。……それでも、なかはらにじょおうのかごをあたえる?」

女王のその言葉に、私は目を逸らした。
私にとって、究極の存在だった。

第195話「中原中也という男」夢主→←第193話「汚濁。(弐)」



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設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年1月6日 15時

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