Episode10 ページ12
「…オラ、味わって食えよ。」
「毎度飽きないなお前も。」
「うっせ!!今回はイケたと思ったんだよ。」
「ふっ…甘いな。」
優雅にゴリゴリ君を片手に食べるコイツに
ムカつきながらも頭ん中はさっきのことばかり。
ギリギリ決まったコイツの技。
けど止められた。
抜かす寸前にオレの手にボールは無かった。
一瞬だった…見失っちまった。
「強ェよ…ホントに。」
心のどっかで勝ったと確信した。
その気の緩みを狙ったかのようにコイツは
オレのボールを奪った。
「惜しかったよ。」
「うっせ。」
「危なかったさ。」
「ダウト。」
微塵も思ってねークセに。
惜しくも危なくも無かったろ。
結局、オレに気の緩みがあっても無かったにしろ
お前が勝ってた。
「…底辺のままじゃねェか。」
呟く声に反応を示したのは意外にもコイツだった。
少し驚いた後に、考える素振りを見せて
食べ終わったゴリゴリ君の棒をオレに向けた。
「…何を思って底辺と口にしたのか分からないな。
さっきの言葉は嘘じゃない。
俺は本当に危ないとも惜しいとも思ったよ。
今の言葉は過小評価し過ぎじゃないか?」
「今更フォローなんて要らねェんだよ。
危なかっただろうが惜しかっただろうが
負けたんなら一緒なんだよ。
…後、コッチ向けんな捨てろ。」
「お前にはフォローしている様に聞こえるのか?」
…思わなねェよ。
お前はオレに気を遣うヤツじゃ無いってこと
くらい良く知ってる。
だからこそ負けたのが悔しいくて堪んねェんだよ。
オレはあの一瞬、お前の隣に並んだと思ってたよ。
けど現実は違った。
並ぶ?違ェだろ…何言ってんだオレは。
負けたオレは結局、お前らの。
…お前の隣になんて並んでなんか無かった。
ずっと遥か彼方上を行くお前の力の差を
見せつけられただけだ。
あぁ、そうだ…オレは底辺のままだよ。
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作者名：唄詠 | 作成日時：2019年6月29日 1時
