ここはロマンス大通り【ars】 (ページ24)

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「ところで、この短冊どこに吊るすの？笹、無いし...」

私が言うと、翔さんは「あ！」って目と口を真ん丸にした。

「そこまで考えてなかった」
「えー？フフッ」
「あ！アイツに吊るそう！ゴリライモ！」

彼が、部屋の端にそこそこな存在感で佇んでる観葉植物を指さした。

何か緑が欲しいなーって言ってたから、引越し祝いに私がプレゼントした物。

「クワズイモね」
「ゴリライモ」
「クワズイモだってば」
「違う違う、名前！俺は人間の櫻井翔。アイツはクワズイモのゴリライモ」

観葉植物に名前つけちゃうんだ、翔さん。
やめて、可愛い。
どうしよう。

あ、ってゆーか...

「枯れてない」
「当たり前だろー？愛情込めてお世話してるもん」
「私だと思って？」

冗談っぽく言うと「違う」ってスパッと言い切られた。

「そんな即否定しなくても...」
「だって葉っぱを静香だとは思えないし」
「.....」
「生身の静香がここに居るし」

翔さんの手が伸びてきて、私の髪を指先で挟んでツーっと滑る。

髪にも神経が通ってるのかな...って思う位に、気持ち良くて

お返しがしたくて、私も翔さんの髪を撫でたら

彼は恥ずかしそうに俯いてしまった。

私達はクワズイモのゴリライモに短冊を吊るした。
糸が無かったから、結束バンドで。

「翔さん、明日も仕事だよね？」

突然来た自分が悪いんだけど、やっぱり連絡して休み取ってて貰えば良かったかな...って少し後悔。

「んー？それが休みなんだな」
「うそっ！」
「嬉しい？」
「嬉しい！」
「わー、すげぇ素直」

眉毛を八の字にして、翔さんが笑う。

「何したい？」
「どうしよう...何でもしたい」
「何でも良いよ？静香の仰せのままに」

まるで執事みたいに胸に手を添えてる姿が、本当に格好良くて

何だか辛くなってくるくらい。

「翔さん...」
「ん？」
「私、翔さんと一緒に居られればそれで良いよ...」

翔さんの胸に、そっと触れると

彼はその手を引いて、ギュウっと抱き締めてくれた。

ソファの上で、重なるように抱き合う。

「そんな事言って良いの？」
「...だって、ホントにそう思うから...」
「俺、時が来たら襲うって言ったよ？」
「.....うん」

眼鏡を外した翔さんの指が、私の背中をなぞる。

「じゃあ」

私の顎を舌で撫でて、彼が笑う。

「襲われとこっか」

その舌が、私の唇を割った。