ここはロマンス大通り【ars】 (ページ25)

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その後、お互いシャワーを浴びて

「天の河見えるかな？」って2人でベランダに出た。

「んー...やっぱ都会では見えないのかなぁ...」

一つの星も見えない夜空を見上げて、私が言うと

「都会にも星はあるんだよ？目が慣れたら見えるんだけど...まぁなかなかね」

となりで煙草を加えた翔さんも、空を見上げた。

「綺麗な星空、見てみたいなー...」
「じゃ、来年はどっかに天の河見に行こうか」
「...えっ？」
「どの辺だと綺麗に見えるのかなー」

ふう、っと煙を吐き出す。

「翔さん...」
「何？」
「...良いの？」
「何が？」
「...来年の約束なんて、してくれるの...？」

私はこの夢みたいな幸せが、明日無くなってしまっても不思議じゃないっていつでも思ってて

特に遠距離になってからは、余計にそう思うようになってて

だから、翔さんの口から来年の話が出てきた事に驚いたし、凄く嬉しかった。

なのに、翔さんは

「来年ってゆーか、もっと先の約束もしようか」

そんな事を、微笑みながら言うから。

「...ありがとう...」

もう、それだけ言うので精一杯。

「こちらこそ、ありがとう」
「...え？」
「来てくれてありがとう。嬉しかったよ、ホント」

グシャグシャ、って雑に頭を撫でられる。

「俺、夏休み9月まで取れないってこないだ電話で言ったじゃん？」
「うん...」

そう。
だから、私はちょっと頑張って仕事して有給を取った。

まだ2ヶ月も会えないなんて、無理だと思ったから。

「だけど、静香はそんなに寂しくなさそうだなーとか思っちゃって。私も忙しいからーとか言うしさ」

面倒な女には、なりたくなかった。
自立してるって、思われたかった。

「危なかった。俺、本当に『俺と仕事どっちが大事！？』って聞きそうだったからね」

ダハハッて笑った翔さんが、煙草を消す。

「七夕に雨が多いのは、雲で目隠しをして彦星と織姫がイチャついてるからだって言うよね」
「あー...フフッ。うん」
「でも今年は晴れてるから、見せつけたいのかなと俺は思ってんだけど」
「あらー、大胆だね」

・

七月七日。晴れ。

やっぱり天の河はよく見えない都会の夜空の下

「俺らも見せつけてやるか」
「え？」

現代の彦星が、織姫に口付けた。

・・・・・END・・・・・