10.お前は肉食獣か。 ページ11
***
「ああ、そこに出てるやつで全部かな。今回は夏イベントとか載ってるからか想像以上に人気でさ。明後日には追加で来るとは思うんだけど…。」
レジ付近のタッチパネルを操作しながら、眼鏡をかけた店員さんがそう言い放った。
瀬名泉の形相が明らかに鬼になっていくのはその場にいた誰もが気づいた。
「発売日に買わなきゃ意味ないの!あんた本屋さんなんだから本の1つくらい出せるでしょ!?」
店員さんに襲いかかろうとする瀬名泉の襟首を必死に掴んでこちら側に引っ張る。
この人今にも過呼吸おこしそうで怖いんだけど。
『ほら、どぅどぅ…落ち着け〜大丈夫だぞ〜』
瀬名泉をとりあえず宥められたところで、怯えた店員さんに一言謝ってから店内を後にした。
そんな私の片手には雑誌の入った袋が提げられていた。
***
「ねえ、もうあんたのでいいから譲ってよ。」
『は?嫌ですよ。寝言はやめろください。』
「新参のくせに生意気〜。」
『わりと私新参では無いと思うんですけど。』
「俺はゆうくんがアイドルになる前から見てたしぃ?あーあ、かぁわいかったなぁ!今もだけど。」
『…のわりにあまり懐かれてないけど。』
「一般人は黙っててくれる?」
瀬名泉の意味のわからないマウントに肩をすくめながら、私はタコ焼きに思い切り串を刺した。
かつお節とソースとの香りが胃袋を刺激してきて、思わず頬が緩む。
「うっわぁ…昼間からそれ食べるの?それ一皿で何キロカロリーあると思ってんのよ。」
『アイドル兼モデルさんは大変ですね。…ふふ、一般人は食べても大丈夫なんですよ。』
そう言うと渋い顔でフードコートの水を飲み干す瀬名泉。なんだか勝った気がした。
「デブるよ、そしたら豚って呼んであげようか?」
『黙れゴリラ。』
デブという言葉を無視するかのように勢いよくたこ焼きを口の中に放り込む。
『……んごッ…あっづ!?…ふー、ふー!』
「ぷッ…ばっかじゃないのぉ?…あはははっ!できたてで熱いに決まってるのに!」
急いで紙コップを取り、口の中に大量の水を注ぎ込んだ。
ゆっくり噛んで飲み込んでからも、舌のビリビリがおさまらない。
「こんなん食べてるからバチが当たったんだよ。あんた俺の後輩に似てる〜」
『…もう、笑うなんてひどいです。雑誌ちょっとなら譲ってあげてもいいと思ってたのに。』
「えっ!」
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とお(プロフ) - わあぁあぁ好きです…!更新待ってます! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 89d53c4d30 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 悠希さん» なんと嬉しいお言葉を…!ありがとうございます(;_;) (2021年11月26日 12時) (レス) id: e457bdd78b (このIDを非表示/違反報告)
悠希(プロフ) - やばい瀬名泉がちゃんと瀬名泉してる…!(語彙力) (2021年11月20日 17時) (レス) @page39 id: afd5f610df (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - わー!有難いお言葉をありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです頑張ります;; (2021年10月26日 23時) (レス) id: e457bdd78b (このIDを非表示/違反報告)
じゃがいも - うわわわ………!!! 瀬名泉ならこういうこと本当にやりそうで面白いし、恋心に気付く瀬名泉さんの描き方がすごく好きです!応援してます! (2021年9月6日 6時) (レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2020年3月4日 22時