#21 ページ22
太宰side
A「ねぇ、中也。人間ってどれくらいの出血で息絶えると思う?」
ニコリと笑いながらそういうAは、再度目隠しをした男の回りを歩きながらそう言った
あの後、Aは男に目隠しをし、部屋を一度でた
戻ってきたときに手に持っていたのは数本の水の入ったボトルだ
そしてAは何を言うわけもなく、瞳を輝かせながら男の首筋にペン先を滑らせた
皮膚が裂けるような強さではなかったが、視覚を奪われた男としては裂けたと思ってもおかしくはないだろう
ペンを置いたAは、やはり何も言わずにペンを滑らせたところに水が垂れるように細工をした
ここまでくればAが何をしたいのかは理解できた
だけど何をしているのかイマイチわかっていない中也は、Aの質問に首を傾げる
中也「半分くらいか?」
A「はっずれー」
太宰「…三分の一だよ」
呆れ半分で質問の答えを投げると、満足そうにAは笑った
これで準備は整った
―――Aが始めたのはブアメードの血だ
実際は一滴の血も流れていないにもかかわらず、致死量の出血をしたと勘違いして死んでしまうという不思議なものだ
なぜこれが最高の祝福なのか
恐らく経緯を求めているのではない
Aが祝福と言ったのは結果の話だ
この方法をとったのはAのただの好奇心なのだろう…
A「太宰もやってみる?」
太宰「…痛いのはいやだね」
A「うん、知ってた。却説、そろそろ致死量かな」
太宰「…そのようだね。後は気力の問題だ」
そんなことを話している間に、男はピクリとも動かなくなった
Aもそれに気づいたのか男の脈をとり、ゆっくりと口角をあげた
A「喜び給え…君は生きていたことが証明された…最高の幸せだ…」
その言葉でようやく中也も察したのか、目を見開いてAを見やった
それに対しAはただ「あぁ羨ましい」と溢した
A「…何故人は勘違いで死ねるのに、勘違いをしたまま生きられないのか…」
中也「A」
A「愚問だったね。所詮私たちは皆、惨めな数個かの無機物に過ぎない」
「勘違いのなかで生きているのだ」一瞬目を伏せAはそう言った
生憎それに返せる言葉を、私は持ち合わせていない…
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