#22 ページ23
中也side
捕らえた男は死んだ
一滴の血を流すことなく、息絶えた
異能を使ったのかとAに問いたが、違うらしい
詳しいことは教えてくれなかったが一度試したかったのだと、Aは笑った
その様子を見た太宰は何か思うところがあったのか、「行こう」とだけ言って部屋を出て行った
だから部屋に残っているのは俺とAだけだ
いつものAなら置いて行った太宰を、小言を言いながらも追いかける
だけど今は何故か俺を正面で突っ立っている
否、本当はわかってる
「何故」なんて一寸も思っていない
わかってるんだ
俺もそこまで馬鹿じゃない
中也「A。俺も…」
「一緒に行く。」そう言おうとしたが首を振られてしまった
断られることはわかっていた…
わかっていたが…
思わず拳に力が入る
それに気づいたAは、そっと俺の手を取った
A「付いてきたら中也、泣いちゃうでしょ?」
おどけるような口ぶりでそう言うA
思わず「泣かねぇよ」と返したが笑って返されてしまった
A「中也は…仲間を大切にする人って知ってるから…来たらダメだよ」
「絶対に」と念を押してくるA
俺はどうにもAの力強い瞳に弱いらしい
グッとでかかった言葉が消えてしまった
A「中也。別れを云える人生は素晴らしいものだと思うのだけれど…どう思う?」
中也「どうって……」
A「…私の人生は…中也のおかげで幾分か素敵なものになったよ」
満足気にそういうA
俺は咄嗟に離れそうになった手を掴み、引き寄せた
少しばかりAの方が背があるため、俺の腕にすっぽり収まるという事はない
それでも細身のAをこの腕で囲うことはできる
A「…中也」
中也「悪ぃなちょっと付き合ってくれ…」
らしくないのはわかってる
カッコ悪いのもわかってる
それでも湧き上がるこの感情を抑え込むことはできなかった
Aも察してくれたのだろう
ゆくっりと俺の背に腕を回し、力をこめた
だけどそれも一瞬だ
すぐにAは腕をほどき、俺の帽子を少しあげ俺のおでこに軽い接吻を落とした
A「さよならだ。中也…」
少し身を引いてそう言うAの手首を捕まえ、少しかがみこんでAの手の甲に接吻をした
ーーー手前は誰よりも人間らしい人だ
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