43話 ページ44
｢千世子さん、少し出かけてきます｣
申し訳ないことに千世子さんに買ってもらったショルダーバッグを持って、靴をお店の外に出る。
｢気をつけていってらっしゃい｣
今日のフェアは何かわからないが、異様にキラキラした格好で千世子さんが返事をした。
｢午後には帰ってきます｣
道を歩いているといろんな人に会う。
人通りの多いところは苦手だけど、誰もいないというのもまたそれはどこか寂しい。
｢ちょっと遠出になるかも｣
早めに出てよかった。
午後からはお店のお手伝いの約束をしている。サボるわけにはいかない。
漁船の同乗者さんの情報がいくつか引っ掛かった。
流れ着いた場所が特定できたので、そこに行くことにしたのだ。
誰か何か知っているかもしれない。
聞きこみも重要な手がかりになる。
お小遣い代わりにもらったバイト代を使ってバスに乗る。
今は9時。急げば11時には帰れる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊
あの日のことはよく覚えている。
｢剣崎！捕まえてくれ！！｣
｢え！？は、はい！！｣
いつもの脱走劇を繰り広げていると、背の高い男の人に捕まった。
｢剣崎、今日はこの子のことで頼み事がある。
面倒を見てやってくれないか｣
｢俺がですか！？｣
その人は私を見て困ったような顔をして、私は始終その人を睨んでいた。
｢名前はAだ。
｢BOARD｣で保護するまでひとりで暮らしてきて、親がいない｣
烏丸所長がざくっと私の説明をしているのを、ただ服の裾を握りしめて聞いた。
｢親が…？｣
いつもみんな、私を哀れむような目で見た。
私はその目が大嫌いだった。
｢ああ。もしかしたら、お前になら心を開いてくれるかもしれないと思ってな｣
烏丸所長はその中のひとり。
たくさんいる中の、ひとり。
｢…俺が責任を持って預かります｣
この人も同じ目で私を見ているのかと思うと、顔を真っ直ぐ見ることができなかった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊
たぶん、行っても何も見つからない。
探しても親なんてきっと見つからない。
わかっていても、探さずにはいられなかった。
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ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
