42話 ページ43
｢え｣
起きたらアンクの顔がすぐ近くにあって驚いた。
私はアンクと一緒に寝た覚えなんて一切ない。
なのに。なのになのになのになのに。
｢あ、アンク、起きて…｣
どうして私はアンクに抱き締められて寝ているのだろうか。
事故…でこんな状況になるとは思えない。
起こそうとして足で軽く何度か蹴ると、アンクがもぞりと動く。
｢A｣
何の嫌がらせだか、余計に力が入った。
体を抜こうとじたばたするが、どうにもならない。
｢あぁもうこんなところふたりに見られたら…！｣
夢見町に来て初めて、ひとりで来てよかったと思った。
でも落ち着いている場合じゃない。
なんとか離れようと足を蹴る。
するとアンクがまるで私と離すのが嫌と言うように私に手を伸ばした。
｢……ここにいろ｣
寝言なのか起きているのかわからないけど、なついてくれてはいるんだなーと笑ってしまう。
そうして結局起こせずもぞもぞしていたら、また抱き寄せられた。
｢まあ…いいか｣
動くのをやめて目を閉じる。
その安心しきった顔を見たら、なんだかどうでもよくなってきた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊
｢えっとAちゃん、これどうしたの…？｣
｢これって…ってわぁぁぁぁあぁあ！？｣
映司さんに起こされて、二度寝する前のことを思い出した。
…まあ今も同じ状況下にいるから思い出さなくてもいいけど。
アンクの体は比奈さんのお兄さんの体。
これじゃまるで刑事さんが犯罪者だ。
｢アンクいい加減起きて！！｣
映司さんがアンクを私から引き剥がす。
｢Aちゃん、アンクに気に入られてるのかも｣
あからさまに話を反らすのやめてください。
その前に何があったかを聞くのが普通ではないのか。
目を覚まして映司さんの手を払うアンクを見る。
｢お前が服を掴んできたんだろうが｣
｢えぇ…｣
アンクが私の首根っこを掴むが、覚えのないことで責められても困る。
｢まあいい｣
手を離してソファに座るアンクを見て、自由人だと思ったのは私だけだろうか。
｢私先に着替えて千世子さんから今日の衣装もらってきますからちょっと待っててください｣
さっさと通常モードに戻る私が言えた口でもないかもしれない。
｢え、あ、うん。あっち向いとくね｣
最初は映司さんが部屋を仕切ろうと提案したが、正直お金と労力の無駄なのでやめておいた。
着替えるときはお互いに声をかければいい。
Tシャツに腕を通して短パンを急いではいて、部屋を出る。
｢あ、アンク｣
ドアを閉める前に声をかけた。
｢私、アンクのこと嫌いじゃなくなったかも｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
