38話 ページ39
｢アンク…？｣
どうしたらいいかわからないというように、Aちゃんがアンクの名前を呼ぶ。
｢お前、どこ行ってた｣
｢ご飯調達、と、あと…｣
Aちゃんもしどろもどろになっている。
まさかアンクが。
あのアンクが。
Aちゃんを心配しているなんて。
知らない間に消えてた人にどこにいたかと聞くということは、そういうことだ。
｢俺の知らない間に何が……ってそれ！！｣
アンクに肩を掴まれているAちゃんは手にいっぱいのセルメダルを持っていた。
｢いろいろあってこれアンクに渡そうと思って…｣
戸惑いながらもアンクの腕にセルメダルを押し込んでいる。
｢お前ももう少し早けりゃ役に立つんだがなぁ｣
Aちゃんから手を離すと何事もなかったかのようにそう言うアンク。
｢せっかく持ってきてあげたのに何その態度｣
それにつられてAちゃんもいつもの調子に戻る。
｢アンク昨日からどうしたの、本当に…｣
昨日から？
昨日からってまさか
｢Aちゃん。まさかだけどあれからずっとここにいたの？｣
｢さっきはいませんでしたけど、まあずっとですね｣
そのまさかだった。
アンクを見ればもうどこかへ向かおうとしている。
たぶんヤミーのところ。
｢お前はここにいろ｣
俺が言うより先にアンクがAちゃんにそう言う。
｢…アンクのくせに｣
ぼそりとAちゃんがぼやくと、アンクが振り向いて服の裾を指差した。
｢その格好でついて来る気か、お前｣
Aちゃんが自分の服…というか着物をまじまじと見つめた。
くくったり折ったりしているから地面にはついていないものの、裾を持ちながら走らなければずり落ちてくるだろう。
｢怪我が嫌ならそこで大人しく座ってろ｣
アンクにしては言い方が優しいような気がする。
邪魔、とか足手まとい、とか、そんな言葉を使いそうなのに。
｢別に怪我は…｣
｢待っていろ｣
反論しようとしたAちゃんを遮ってアンクが走り出した。
俺もそれについて行く。
｢なあアンク、何かあった？｣
どこかおかしい。
Aちゃんへの接し方が明らかに変わっている。
｢何もない。
仮にあったとして、お前に話す必要があるか？｣
俺の顔も見ずにそう言うアンクが腹立たしい。
｢そう言うと思ったよ！｣
バイクに乗って走るアンクに怒鳴る。
グリードにも思いやりとか、愛おしいとか、そんな感情があるのだろうか。
もしあるのなら、Aちゃんはそれをどう受け止めるのだろうか。
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ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
