30話 ページ31
｢Aちゃーん！
…ってあれ？Aちゃんいない？｣
｢ちょ、黙って！｣
｢今その名前禁句！！｣
｢…A何してるんだろうなぁ｣
｢ああもう馬鹿！｣
｢…なんかよくわかんないけどすみません……｣
＊＊＊＊＊＊＊＊＊
｢え、お兄ちゃんって…どういうこと？｣
今確かにAちゃんは｢お兄ちゃん｣と言った。
そう言えば昨日も何か言っていた。
｢あの人がお兄ちゃんとか、そういう訳じゃないです。ちょっといろいろと…｣
Aちゃんが苦虫を噛み潰したような顔になった。
何かを考えているようなのでアンクに小さな声で話しかける。
｢なあアンク、Aちゃんって家庭の複雑な事情とかあるのかな…｣
俺が言えた話でもないけど、Aちゃんに何らか特殊な事情があるのははっきりしている。
アンクならAちゃんと接触することが多かったみたいだし、何か知っているかもしれない。
｢俺が知るか｣
期待は綺麗に裏切られた。
そもそも知っていても同じことを言う気がする。
｢Aちゃん｣
｢何ですか？私あの人探し出さないといけないかもしれないんです｣
つまり話しかけるなと。
｢ひとつだけだから！
Aちゃんって何のためにわざわざこの町に来たの？｣
率直過ぎるかもしれないが、聞いておく必要はある。
もし家出とか、そんな理由だったら。
説得して帰らせる？
それともしばらく面倒を見る？
悩んでいると、案外すんなりとAちゃんは答えてくれた。
｢あ、言ってませんでしたっけ？
私、両親が誰かわからないのでそれらしき人の情報を見つけて一ヶ月の期限付きでここに探しに来たんです｣
｢一ヶ月？｣
短いのか長いのか微妙な期間だ。
｢はい。帰らないといろいろと大変な事態に直面することになるので…｣
Aちゃんがここに来た理由が予想以上で驚いた。
見つかるかもわからない人をたったひとりで探しに来たのだ、この小さな女の子が。
しかもあっけからんと自分の境遇を何でもないことのように言う。
やっぱり放っておかれているんじゃなのだろうか。
普通、女の子をひとりで野宿させたりなんかしない。
昨日のメールはそのお兄さんじゃなくて友達からのものだとか。
それで感覚が麻痺しているのかもしれない。
｢まだこんなに小さいのに大変だね…｣
誤解だとか勘違いだとは全然思わなかった。
｢こいつ見かけよりよっぽどたくましいぞ｣
Aちゃんの左腕を睨み付けるアンク。
何かしようとしたら殴ってでも止めよう。
でもアンクがたくましいと言うのなら、たぶん本当にそうなんだろう。
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ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
