29話 ページ30
｢これからは食べ過ぎないよう気をつけます｣
担架で運ばれる男の人がそう言うのを聞いて安心する。
｢ほらな。人間は一度欲望に負けても、またやり直せる｣
アンクにどうだと言わんばかりに胸を張る映司さんだが…
｢あのー、できれば病院食の美味いところに…｣
まだ食べ物のことを考えている男の人に口をあんぐり開けた。
｢俺の勝ちだな｣
アンクはしてやり顔で映司さんにそう吐き捨てる。
今回は残念ながら映司さんの負けだ。
歩き出すと、突然真っ黒の車が私達の前で止まってドアが開いた。
中からは綺麗な女の人が出てきた。
その人が持っていたモニターに、スーツの上にエプロンを着た男性が映る。
｢やあ火野映司君。それにグリードのひとり、アンク君だったね｣
｢え？｣
｢何だ？｣
私は無視か。
そう思ったとき、私の方を向いた。
｢君は剣崎A君だったね｣
何故その名前を、とか
何故私を知っている、とか
聞きたいことは山ほどある。
｢まずは我々の出会いを祝して！｣
パァン！
クラッカーの音が響く。
そんなことより、私の中の何かがこの人を拒絶した。
思わず木の後ろに隠れてしまうほど、その人の雰囲気は異様だった。
｢人と人との出会いは何かが誕生する前触れでもある｣
その人は私を気にせず話を続ける。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊
男の人は鴻上光生といい、鴻上ファウンデーションの会長であると言う。
用件は戦いに協力する代わりに、手に入れたセルメダルの7割を渡せということだった。
もちろんアンクは断った。
あまりにも酷い。アンク以上かもしれない。
アンクがモニターを持つ女の人に威嚇したとき足元に銃弾が放たれ、昨日のバイクの人が現れた。
セルメダルなんて必要のない映司さんは鴻上会長さんの｢グリードとの戦いには必要だよ｣という言葉に同調する。
しかし何の目的でセルメダルを集めているのかと聞くと、｢秘密だ！｣と言われてしまった。
｢アンク君、返事はまた後日改めて聞くよ｣
そう言ってまた私に目線を送る。
まだ何かあるのだろうか。
｢君とも話したいことが山程ある。場を改めていつか話そう！｣
そう言って私にトランプのスペードのAのカードを見せる。
｢え、そ、それ！！｣
木の後ろから飛び出した瞬間モニターのテレビ電話が切れた。
女の人とバイクの人も去って行く。
｢なんで知って…｣
スペード。A。
そこから連想されるものは…
｢お兄ちゃん…｣
｢へっ？｣
｢あ？｣
部外者がこれからどんどん増えていく気がするのはきっと気のせいではない。
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ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
