1話 ページ2
兄妹ふたりの別れをこっそり見守るふたり。
｢見送らなくてもよかったのかな…｣
｢剣崎君がひとりで見送りたいって言ったのよ。みんな遠慮してるんだから、私達も我慢しなきゃ｣
白井虎太郎と広瀬栞。
剣崎一真、剣崎Aと同じ屋根の下で暮らす者であり、剣崎の協力者でもある。
始まりは虎太郎が仮面ライダーの取材のために剣崎兄妹と栞を居候させたことから。
｢そりゃあそうだけど…｣
虎太郎が口を尖らせる。
Aの見送りをできなかったことが不満で仕方ないらしい。
剣崎兄妹が住まいをなくし、人類基盤史研究所｢BOARD｣が壊滅してからの少しの間の付き合いだが、愛着というものは誰にでも生まれうる。
一緒に住んでいたのなら尚更のこと。
｢自分の家族の情報が入ったからって、遠くに探しに行っちゃったらやっぱり寂しいわよね｣
栞もため息をつく。
Aがこの家を出ていったのには大きな理由があった。
Aには家族がいない。
剣崎とは兄妹と言っても義兄弟で、実際に血が繋がっているわけではない。
しかしアンデッドに襲われていたところを｢BOARD｣に保護され、成り行きで剣崎と暮らすことになったのだ。
自分が誰なのかもわからないような幼い頃から独りだとAは言っていて、戸籍を調べても見つからず、Aという名前は｢BOARD｣に与えられたもの。
ところが先日、父親、母親、娘の3人全員が行方不明という家族の存在を虎太郎のおかげで知ることができた。その娘というのがAと同じ年で、誕生日がAの推定生年月日と近い。
もしかしたら自分のことかもしれないと、その行方不明の父親と母親の情報をインターネットの掲示板で探し始め、有力な情報が手に入ったのだ。
長くなってしまったが、要約すると
本当の両親かもしれない人物を探すため、Aはひとりで家を出た
ということだ。
｢ひとりでってところが心配よね｣
ドアの前で数分突っ立っている剣崎を見ながら栞は呟く。
｢Aちゃんしっかりしてるけど、言い出したら止まらなかったし｣
剣崎、虎太郎、栞の3人でひとりは危ないと止めようとしたが、｢家出になってでも絶対に行く｣と言って聞こうとしなかった。
他にも止めようとした人はいたが、止められるわけもなく。
アンデッドが出現する中剣崎がついていくわけにもいかない。
1ヶ月以内に一度は帰ってくることを条件に、許すことになってしまったのだ。
｢女の子だし、野宿も…ねえ？｣
｢1ヶ月はやっぱり長かったんじゃ…｣
1ヶ月間、こんな話題がひたすら話されるのだろう。
もちろん剣崎も加えて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
