【倉持洋一とキャッチボール(1)】★ ページ35
珍しく部活が早目に終わった、土曜日の夕暮れ。
いつも通りマネ室で一人残って整理をしていると、部屋の外から誰かの話し声が途切れ途切れに聞こえてきた。
ガラガラガラ、と窓を開けてみると、すぐ近くで凸凹コンビのキャッチボールが行われている。
「…よーし、もう一回。」
パシッ!
「おー、上手い上手い。そうやって毎回ちゃんと胸の前で捕れよ。」
「うん、わかった!」
自分が捕球したボールを誇らしげに見つめているのは、小学校低学年くらいの男の子。
そして、その子の相手をしていたのは…
「…倉持?」
思わずその名を呟いてしまったけど、倉持は私には気付かずにキャッチボールを続けている。
「…おし!投げるのも上手くなってきたな。」
「ほんと?」
「あぁ。お前、野球でやりたいポジションとかあるのかよ?」
そう言いながら、倉持はまた男の子にボールを投げ返す。
それをまたパシッとしっかり胸の前で捕って、男の子は再度倉持へボールを投げた。
「…うん…僕、ショートがカッコいいと思うんだけど…」
「ショート?おぉ、カッコいいよな!俺もショートだぜ!」
「うん、知ってる!さっき見てたよ!凄かった!」
キラキラと目を輝かせながら男の子に言われて、倉持は満更でもないような顔をしていた。
…あー、嬉しそうだなぁ。
「…でも…」
ところが、男の子はすぐにシュンと肩を落としてしまう。
「…僕には、ショートはちょっと無理かも…」
「え、なんでだよ?」
ボールを投げ返そうと振り上げた手を止め、倉持が驚いたように聞くと、男の子は迷いながら倉持へ目を向けた。
「だって……僕、お兄ちゃんみたいに……」
「俺みたいに?」
「怖い顔じゃないし……」
「おい待て。顔は関係ねぇ。」
…と、倉持が真顔でツッコむのと、私がブフッと吹き出すのがほぼ同時だった。
こ、怖い顔…!
「え、関係ないの?ランナー怖がらせたりとかしないの?」
「怖がらせるっつーか…そりゃ多少は牽制することはあるけどよ…」
「そうなの?じゃあ僕にもできるかなぁ………あ!もう帰る時間だ。お兄ちゃん、キャッチボールしてくれてありがとう!」
「お、おぅ…」
「じゃあねー。」
男の子はマイペースにそう言って、手を振りながら帰っていった。
そして、その背中がかなり小さくなった頃。
「…Aさん…」
と、倉持が半目でこっちを向く。
「な、何かな?」
「笑い過ぎっすよ…」
「ご、ごめんごめん…!」
【倉持洋一とキャッチボール(2)】★→←【白河勝之とSとM】★
1109人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪星(プロフ) - さーたんさん» 楽しんでもらえたようで良かったです!とりあえず、照れはするだろうな、と。それからの反応はそれぞれ違うだろうな、と思いながら書きました(>_<)ゾノはこのシリーズのオチ担当です(笑) (2017年3月2日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - のりさん» ゾノは、あの歌を歌ってる場面がポンッと降ってきまして(笑)御幸の回なのになんだかゾノがメインになってしまったような…(^^;まぁ面白くなったからいいかな、と(^^; (2017年3月2日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 桜さん» いえいえ、こちらこそせっかくリクしていただいたのに、お応えできなくて申し訳ありません(T_T)再開したら、またヨロシクお願いします! (2017年3月2日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
さーたん - やばいですね!!!事故チューどれも最高でしたッ!金丸はかわいいし亮さんはかっこいい!!そしてゾノの登場にはわらいました笑 みんなが照れててテンション上がりました笑 ありがとうございます!!笑 (2017年2月19日 0時) (レス) id: a56f300cf9 (このIDを非表示/違反報告)
のり - 雪星さん» ども、おひさです。…とりあえず、ゾノwお主は我をわらかしてくるのぅw御幸の話を読むとデリカシークラッシャー御幸を思い出してただでさえ吹いちゃうのにw (2017年2月16日 23時) (レス) id: 7a0132dcf2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪星 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月29日 18時