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第35話 ページ35

深く傷ついたキノは部屋に閉じ籠もってしまった。

泣き崩れる姿を見て、スネイプは居た堪れない気持ちになった。

ブラベウスがパチン!と指を弾く。

するとまたもや、情景が変わった。

屋敷の中で聞き慣れない、赤児の泣き声が響き渡っている。

扉の近くでキノが水差しを持って立っていた。

ベッドには最初に連れ去られてきた少女カトリーヌが、赤児を大事そうに抱き抱えてあやしている。

少女の腕の中で、赤児はスヤスヤと眠りについた。

赤児は生まれてまだ数時間しか経過していないように見える。

新生児である我が子を愛おしそうに見つめる少女の顔は、すでにもう母親らしさに溢れていた。

「ねぇ見て、ルイ様。なんて可愛いのかしら」

ベッドの脇に立っていたルイがじっと赤ん坊を見つめる。

「わたくしとあなたの子……本当に天使そのものだわ」

「……」

うっとりするカトリーヌを余所に、ルイは無表情だった。

キノも表情が硬かった。

水差しを持ったまま、黙って二人の様子を見ている。

「ねえ、ルイ様。この子の名前は何になさいます?」

「キノ」

『は、はい』

父親に突然呼ばれたキノは、表情を硬直させたまま近づいた。

「この赤ん坊を森に捨ててきなさい」

『!』

「ーーえ?」

ルイの言葉に、キノとカトリーヌが固まった。

『捨て……何故ーー』

「ル、ルイ様!?何を言ってるの!!?この子はあなたの子なのよ!!」

カトリーヌがルイの腕を掴んで言った。

「捨てるなんてーーどうしてそんなことを仰るの!!?」

「理由はひとつ。この子に魔力が無いからだよ」

ルイは無表情のまま、眠る赤児を指差した。

「ま……りょく……?」

「カトリーヌ、私は言ったはずだよ。魔力の無い子は要らないと。私の血を引いていようが、魔力の無い子は必要ない。だから、この子は処分する」

「そんな!!」

『………』

カトリーヌはショックのあまりルイをガン見し、それからスヤスヤ眠る我が子をギュッと抱き締めた。

「殺させないわ!痛い思いして産んだのよ!!魔力がないから要らないなんてーーあなたは父親なのに!!!」

カトリーヌはヒステリックに叫んだ。

抱き締めたまま泣き叫ぶせいで眠っていた赤児が目を覚まし、ほぎゃあほぎゃあ!と泣き出した。

「キノ。この子を森へ連れて行きなさい」

『……で……でも……』

キノは水差しを持ったまま戸惑った。

カトリーヌが物凄い形相でキノを睨みつける。

「連れてかせないわ!!」

「キノ」

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作者名:あっちゃん | 作成日時:2023年5月5日 9時

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