【東方project】甘く冷静な恋を貴女と。【短編集】 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:22,075 hit

暑い夏の愛―【藤原妹紅】[後編] ページ6

妹紅の腕から抜け出し、床へと寝かせる。幼子のように眠る妹紅の顔を見つめた後、立ち上がろうとするAの腕が引かれ、思い切りよろめいたAは妹紅の上に覆いかぶさる形となった。

「あ～っと…妹紅？」
「うん？どうしたのA。顔なんて赤くして、何かあったのか？」
「……お前、途中から起きてたろ」
「途中からな。にしても大胆だな、A」
「バカ、お前のせいだよ」
「私は何も知らないぞ。Aが勝手に覆いかぶさって来たんじゃないか」
「あ～もう…全部妹紅のせいだから」
「えッ…？」

起き上がろうとする妹紅を床へと押さえつけ、自身の服を緩め、妹紅の首筋に顔を近づける。

「あ、あの、魔理沙の所には行かなくていいのか？今日約束してるんだろ？」
「あ～もう明日でいいや。今日は妹紅の相手してやるよ、たっぷりと」
「えッ、あ…ま、待ってくれ…！色々と心の準備が……」
「嫌だ、待たない」
「なッ…～～～～ッ！！？」

声にならない妹紅の叫び声、Aの愉悦の声が微かに響く。
そんな暑い熱い夏のお話。

―その後。

「あ～…後悔しかない…」
「ごちそうさまでした」
「Aのせいでもう嫁に行けない…」
「妹紅は嫁になんか行かなくていい。私が嫁に貰うから」
「………お前に嫁げと？」
「まあ、嫁いだとしても今までとあんまり変わらんと思うけど」

窓際まで行き、大きく背伸びをする。それから息を吐いて、妹紅の方へと振り向く。

「んまあ、そういうことだから。私はいつまでも待つよ」
「いつまでも…か」
「うん。じゃあ、私は帰るから」
「あ、もう帰るのか？まだ居てもいいんだぞ？」
「だってキスしたぐらいであんなに騒がれちゃ……ねえ？」
「な、なんだよ…あれぐらい普通じゃないのか？」
「さあ？そんじゃまたな～」

逃げるように妹紅の家を去るAの後ろ姿に手を伸ばすも、時すでに遅く、空の彼方へと姿を消していた。

「…初めてのキスだったんだが……まあ、Aになら本望だったしな」

そっと自分の唇に触れ、こんな暑い夏も悪くないか…そう思った不死身の人間、藤原妹紅だった。