暑い夏の愛―【藤原妹紅】[前編] ページ5
永遠の命があればずっと生きられるし、老いることもなく、幸せになれるはずだ。しかしそれは本当だろうか？それを誰かが証明したことはあるのだろうか？少なくとも現時点では居ない。だが、この幻想郷では二人居る。そのうちの一人、藤原妹紅。生きる苦しみを嫌と言う程に味わい、理解している。
そんな妹紅の傍に居るのが氷龍のA。彼女は氷や冷気を主とする。炎を主とする妹紅とは正反対であるが、妹紅はそんなAに惚れてしまったらしい。
「ねえA。このままでもいい？」
「まあ、構わんけどさ。あっつい…」
「うん？そんなこと気にしない」
「ああ……そう？」
床にあぐらをかいて座るAの後ろから手を回し、愛おしそうに優しく包み込む。それを受け入れるように妹紅の腕にそっと触れる。妹紅の腕の中にすっぽりと収まるAは恥ずかしそうに頬を赤らめうつむく。
「そろそろ離してくれない？魔理沙の家に行かなきゃいけないんだ」
「…今日じゃなきゃダメなのか？それ」
「今日約束してんだもん。断るにしても魔理沙の家に行かないとだし」
「じゃあもう少しだけこのままで」
「本当にあと少しだけだからな」
「分かってる」
小さな約束をしてから五分と少し。一向に妹紅の腕が緩む気配は無い。
Aを抱きしめる妹紅は幸せそうな顔をしたまま、いつの間にか眠りに落ちていた。それに気付いていないAは妹紅に話しかけてはため息を吐く。妹紅が寝ていると気付いたのはそれから三分後。
「ぬぁ〜…もう、抱きしめたまま寝るなっての、暑苦しいなぁ」
そう今現在、夏真っ最中。竹林の中で日差しは遮ってくれるのものの、完全にシャットアウトしてくれる訳ではない。それゆえ蒸し暑いに越したことはないと思われる。
暑い夏の愛―【藤原妹紅】[後編]→←訪れる未来の幸せ―【フランドール・スカーレット】
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作者名：狂霧@HAL | 作成日時：2017年12月1日 17時
