八回目 ページ8
冬の夜。なぜ春がこんな山道に行こうと言い出したのか、今だにその本心が掴めない。かれこれ一時間は歩き続けている。この寒さだともうすぐ雪が降りそうだ。
春「大丈夫？ついてきてる？」
裕「あ、はい。」
少し前にいた春が心配そうに振り返った。しばらく黙っていたが、やがてゆっくりと話し出した。
春「今からどこに行くのか、とかこんなとこに何もないじゃないか、とか思ってるでしょ？」
裕也は素直に頷いた。
春「裕也も情報屋だから、ばれてると思ったんだけどなぁ・・・。」
裕「こんなとこに来たことないよ。大体、ここを通ったっていいこと何一つもないし。この先にだって何も・・・・。」
春「本当にそう思う？」
意地の悪い笑みを浮かべた春に何も言い返せなかった。この人はずっと楽しんでいるようなものの中に、悲しみを感じさせる。
そういえば、裕也も莉那も春についてよくは知らない。Aたちに聞いても、本人に聞いてと返されるばかりだ。今頃になって気になった、彼女は何者だ？
春「あ、ほらほら着いたよ。」
少し開けた空間に出た。そこに足を踏み入れた途端、裕也は息を呑んだ。
裕「さく、ら？」
あたり一面に桜の花が咲いている。一陣の突風が吹き去ると、それに従うように花びらが宙を舞う。さらに雪まで降ってきた。合わさることのない二つが静かに、かと思えば激しく空中で泳いでいる。
裕「春さん、これ、なんで・・・！？」
春「さあ？私もよく知らないけど、少なくとも裕也が生まれる前からこの日はこんな感じだよ。」
裕「この日だけ？」
春「そう。」
短く答えると、春は中央に向かって歩き出した。春が歩いていく方向には一本の松があり、その根元には二つの石碑が建っている。小さく簡素なものだが、綺麗に置かれている。
その根元にしゃがむと、春は目を閉じて手を合わせた。あとから追いついた裕也もなんとなく同じ事を繰り返す。
裕「これ、誰の墓なんですか。」
しばらくして目を開けた春に訊ねた。春の横顔はどこか懐かしむような、しかし寂しそうな表情だった。
春「私の父さんと母さん。この日にようやく会えて、そのまま死んだの。」
そっけなく言うと春は立ち上がった。
春「母さんを殺されない為に、父さんは私を育てながら血に染まる命令に従った。母さんはいつまでも父さんを待ち続けた。私は、何も知らなくて、何も出来なかった。・・・・二人が会えるわけなかった。」
裕「じゃあ、なんで二人は会えたんですか？」
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ななみ(プロフ) - 疾風少女、めっちゃ感動しました〜！何回見ても泣けましたよ(^^♪ 笑えるところもいっぱいでした。頑張ってください(*´∀｀*) (2014年8月29日 10時) (
レス) id: abde43f194 (このIDを非表示/違反報告)
月詠命 - 最近忙しくて、なかなか見れずにいましたが、久々に見れました！やっぱりこの作品とても面白いです！更新頑張ってください！ (2014年8月16日 13時) (レス) id: 257169186b (このIDを非表示/違反報告)
桜楼(プロフ) - 白鈴さん» すみません、なかなか忙しくて…。応援ありがとうございます！ (2014年5月31日 21時) (レス) id: b7bc56638c (このIDを非表示/違反報告)
白鈴 - (たぶん)はじめまして、白鈴と言います。本編のほうも番外編のほうも、この小説、大好きです！更新、頑張ってください♪応援してます！ (2014年5月8日 19時) (レス) id: c5c1a67bf2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠命 - こちらこそよろしくお願いします。続きを詠めるのを楽しみに待ってます。 (2014年3月3日 21時) (レス) id: 49e70c2b0c (このIDを非表示/違反報告)
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