検索窓
今日:15 hit、昨日:11 hit、合計:171,617 hit

47話 ページ49

Aside



辛い。


死にたい。


でも死ぬのは怖い…


最近はずっとそんな事しか考えられなかった。


言葉が力を持つ時代。


そんな時代に私は声を失った。


精神的ショックによるものだと、扉の向こう側で説明している声が聞こえた。



助けてと、何度も叫んだ。


何度も、何度も何度も何度も。


掠れて声が出なくなって…


私は助けを求めることをあきらめた。



一兄の腕に抱かれて、最初に感じたのは不の感情。


どうして今頃なの?


いつもうざいくらい傍に寄ってきたのに。


私が助けを求めた時、一番近くにいて欲しい時にはいつまでも来ない。


…なんて。


バカだ。今まで散々自分から突き放していたくせに、


肝心な時にはそんな相手に助けを求める。


来ないのなんて当然の事なのに…


自分が傷つけば誰かを責めずにはいられない。


そんな自分がすごく嫌だった。



もうやらないと…そう左馬刻と二人で約束をしたのに…


気づけば左腕にはたくさん傷が出来ていた。




汚い。


傷まみれの腕も…人を責め立てる自分の心も…


この醜い身体も。


汚くて…黒いものが私の周りをずっと漂っているの。



自分の部屋と、向こう側をつなぐ一枚の扉。


ドアノブに手をかければ靄が移動して、扉を真っ黒に染め上げた。


『っ…』


それが何だか怖くてすぐに手を離す。


汚れたドアは、汚れたままだ…。



ベッドに戻って窓の外を見れば、ビルの隙間に見える青い空と、濁った雲。


またすぐに雨でも降るんだろうか…


そんな天気。


雨が降ったら綺麗に流してくれる?



やり直したい。一から全部…



窓を開けて下を見れば、暗い路地。


ここから落ちれば…きっと死ぬだろう。


人は、簡単に死んでしまうのだから。



死んだら楽になれるの…?


この苦しみから解放されるの…?


少しの恐怖を乗り越えたらその先は…何?


でもきっと…ここよりはましだろう。


『………』


早く…死にたいなぁ…


全てを投げ出したくて、私は目を閉じる。


瞼の裏には兄妹が映った。


こんな妹でゴメンね…。





その瞬間、私の体は浮遊感に包まれた。

続編→←46話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (236 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
577人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

琳檎(プロフ) - しれっと更新再開します…。これからもよろしくお願いします…( ._. )" (6月20日 22時) (レス) id: 2253c94c55 (このIDを非表示/違反報告)
琳檎(プロフ) - 嵯峨野 繆謎さん» お久しぶりです。( 'ω')ノほんとに遅くなってすみません、こんなに早くにコメント下さって泣きそうな位嬉しいです!!! (2020年8月22日 0時) (レス) id: 2253c94c55 (このIDを非表示/違反報告)
嵯峨野 繆謎(プロフ) - やっと更新されたあああ!ずっと待ってました!! (2020年8月21日 23時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
琳檎(プロフ) - 叶芽さん» コメントありがとうございます、続きだすの遅くてごめんなさいね(´;ω;`) (2020年8月21日 23時) (レス) id: be3a7aa177 (このIDを非表示/違反報告)
叶芽 - 続きが気になりました!これからも頑張ってください!応援してます! (2020年5月28日 17時) (レス) id: ab515b650e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:琳檎 | 作成日時:2020年4月13日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。